切り絵 大人の自由時間を愉しむ

 紙を切り抜いたさまざまな形は、古くから中国では冠婚葬祭用に、日本では祭祀や染色の型として使われてきた。現在のように絵画として切り絵が世に広く知れ渡ったのは昭和40年代後半に新聞の挿絵やテレビ放送のタイトル画に使われるようになってからと言われる。黒い紙と切り取った空白とのコントラストだけのシンプルなものから、切って造形した紙に和紙を貼ったり、色をつけたりする複雑なものまで表現の幅は広く、愛好者も増えている。
 茂原市で生まれ育った中山三郎さんが切り絵と出会ったのは、定年後の平成18年、千葉県生涯大学校に入学してから。切り絵クラブに入り基礎を習い、卒業した平成20年から自分で創作した下絵を使って製作するようになった。題材は地元の藻原寺や茂原公園に加え、同大卒業後立ち上げた登山クラブの仲間と出かけた山や妻と長期滞在旅行した長野県の風景が多い。東京や千葉のきりえ美術展に毎年出品し、市内の『ギャラリー寄り道』で個展を開いたこともある。今までに作った作品は100点以上。近所の眼科医院に四季折々に合わせた作品を常設展示する。
 旅行に行くと必ず美術館や小さな絵画館に寄るほど絵が好き。日本の農村風景をほのぼのと描いた画家原田泰冶の絵に影響を受けた。若い頃は油絵を描いたが、たまたま高齢になって出会ったのが切り絵だった。「油絵に未練もあるが仲間も増えましたから」と辞められない。
 切り絵は余計なものをそぎ落とした切り口の潔さが特徴だと言われるが、中山さんの作品は写実的で奥行がある。「描きこみすぎると言われることもあるがこれも切り絵です」とオリジナリティにこだわる。根気のいる作業に見えるけれど、「構図や色を考え、手を動かし、自分の世界に浸れる一番落ち着ける時間」。頭を働かせ、イマジネーションの世界に遊ぶと充足感も生まれる。一番楽しいのは「切った台紙の下に貼る紙にアクリル絵の具でグラデーションをつけ彩色するとき」だそうだ。
 会社勤めのときにはバブルを経験し、サラリーマンの悲哀も味わった。定年退職後に自宅と同じ敷地にあった古い家屋を、薪ストーブのあるログハウス風のアトリエに改築。今はそこで食事時間が煩わしいと感じるほど創作に夢中になっている。地元をテーマに制作してほしいと、大多喜町の観光協会からも依頼されているそうだ。
 今後は「登山クラブで山に登るたびに作った作品を作り直します」とのこと。今まで一度も完璧に出来たと満足したことはないからだ。高齢化している登山クラブが解散する機会に個展を開くつもり。「でも登山から秘湯クラブになるかもしれないなあ」と笑う。6月30日まで千葉県庁前の喫茶ボンヴィルにて個展開催。9時半から16時 土日祝日休。

問合せ 中山さん
TEL 0475・24・8465

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