認知症患者と家族に、地域の手を差し伸べて

 6月4日(土)に茂原市民会館で開催されたのは、茂原市長生郡医師会主催の健康フォーラム2016『認知症に打ち勝つ社会を目指して』。超高齢社会が進む中、日常生活に支障はないが認知症の傾向がある軽度認知症機能障害の人を含めると、認知症患者は4人に1人という割合まで増加すると言われている。
 帝京大学ちば総合医療センターの神経内科医、栗田正さんは第1部で『認知症をどう生きるか?4つの認知症とその対応』を講演。「どうしても年をとると物忘れは増えますが、後で思い出せれば認知症ではありません。鍵を置いた場所を忘れるのは大丈夫、置いたことを忘れると危険です。軽度認知症機能障害の方も、1年に15から20%ずつは認知症へ進行しますので経過観察を大切にしてください」と説明した。フォーラムに参加した811名の地域住民の中には、家族が実際に認知症に苦しんでいるという人の姿もあった。
 第2部で行われたパネルディスカッションでは、実際に介護を経験した認知症家族の会の齊藤ひろ子さんが義母との生活を語る。「本人を含めて混乱、諦め、受け入れを繰り返した約16年。たとえ認知症になっても、義母に嬉しいと感じる心はずっと存在するのだと改めて感じた最期でした。家族は地域のサービスをうまく活用して少しでも自分の時間をもってください」と話すと、会場では涙を流す人の姿も。
 最も有名なアルツハイマー型の他に、前頭側頭型、レビー小体型、脳血管性を含めて4種の認知症タイプが存在する。脳のどの部分で病が進行しているかで、同じ認知症でも症状は大きく異なり、投薬の種類も変化する。人格が変わってしまったなど物忘れ以外の症状が出ると、認知症だと気づくのが遅れ、重症化していることも少なくない。
 そんな事態を防ぐため、茂原市では今年4月から『認知症初期集中支援チーム』が始動している。認知症サポート医、保健師、社会福祉士等が1つのチームとなり、連絡を受けた自宅へ訪問し症状の聞きとりや家庭の状況を把握。チーム内で検討しながら、当事者や家族の視点を重視した医療・介護等の支援体制を整える。期間は連絡を受けて支援体制がとれるまで、最長6カ月を目処に集中して実施。
 茂原市長生郡医師会の安藤五徹さんは、「認知症の方が水戸黄門なら、助さんと角さんは医師と保健師。地域のみなさんはうっかり八衛兵になって見守り、支援して下さい」と絶妙に呼びかけた。茂原市内では今後、4地区にある地域包括支援センターにそれぞれ認知症初期集中支援チームを設置する予定。もしかして認知症なのだろうか、と自分や家族に悩みを持ったなら、抱え込まずに相談してみてはいかが。

問合せ 茂原市役所 地域包括支援センター
TEL 0745・20・1583

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