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ハンマー投げに全力を注いだ高校生活
- 2016/12/16
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県立茂原高校3年 飯田 美涼さん
千葉県立茂原高校3年生の飯田美涼さん(茂原市在住)は、5月に行われた第69回千葉県高等学校大会陸上競技の部に出場。女子ハンマー投げにおいて、46m26㎝という好成績を叩きだし、見事1位に輝いた。「今までの競技人生で一番嬉しかったです。ずっと応援してくれた家族や先生、一緒に頑張った陸上部の仲間に感謝です」と満足そうに微笑む飯田さんが、ハンマー投げに出会ったのは高校に入学してから。
しっかりとした骨格の作りや肩の強さもあり、中学時代には顧問に進められ砲丸投げをした経験があったので、陸上部への入部は迷いがなかった。また、2歳上の兄も同じく同校でハンマー投げをやっており、当時は困った時にアドバイスをもらえるかもしれないという安心感もあった。「スポーツ全般において得意な方ですが、特に小学校時代にやっていた体操で肩が鍛えられていたんだと思います。幼稚園の時には、鉄棒の大車輪で空中逆上がりができたくらいです」とちょっぴり得意そうに話す飯田さん。
とはいえ、4㎏のハンマーをここまで遠くに飛ばせるようになるまでには多くの時間を費やしてきた。平日の放課後や土曜日の練習は欠かさず、常にスクワットなど下半身を強化する練習を怠らなかった。「ハンマー投げは遠心力で飛ばすので、実は上半身の力はあまりいらないんです。遠心力に耐えられる下半身の強さと、ターンといって回る時の足の動きが大事なんです」と、左右の足をゆっくりと動かしターンを見せてくれる。踵やつま先にどうやって重心を置き、その感覚を身体に浸みこませるか。「3ターンできるようになるまで半年、4ターンできるまで丸1年かかりました」というのだから並大抵ではない。
その間にもハンマーをその場で回す基本動作の『スイング』や、まっすぐ歩きながらハンマーを回す『スイングウオーク』の練習もこなす。スイングウオークは、体幹がないとハンマーに全身を持っていかれるので形をくずさないように軸を安定させるために行った。それでも、長く続けていれば壁にぶつかることもある。「始めた当初は飛距離が32mだったのが2年生では40mになりました。それが2年の途中で記録が伸びなくて、とても悩んだ時期があった」という。
陸上部顧問の関郁子さんが「飲み込みも早いですし、努力家です。そして、湧きあがる感情を内に秘めるタイプですね」と評するように、飯田さんは決して悔しさを外には出さなかった。「イライラは多少出てしまっていたかもしれません。それでも絶対人前では泣かないと決めているんです。みんなに心配かけるし。一人、部屋で泣いていましたね」と思い出したように笑う美涼さんを、当時大きく支えてくれたのは、やはり兄の存在だった。
普段から一緒にゲームをして遊ぶことも多い兄とは、ハンマー投げのフォームもよく似ている。「足のつくタイミングをよく見てくれました。1ターン目で身体が結構前のめりになってしまうんです。今もまだ完璧には直っていないんですけどね」というが、ハンマー投げの選手を含めて経験者はとても少なく、飯田さんにとっては貴重なアドバイスのひとつだった。
また、同学年9人いる陸上部のうち女子は3人のみ。種目が全員異なるため、直接的な悩みは分からなかったかもしれない。それでも練習が終わった後にはたわいもないことでふざけ合い、休みの日には一緒に遊びに行くことでお互いがリラックスできた。「茂原高校の陸上部に入って良かったことは、自分に合った種目を見つけることができたことと、色々と相談できる友達を得られたことです」と日に焼けた顔で満面の笑みを向ける。
卒業後は菓子専門学校に進学し、将来はパン屋さんで働く職人を目指す。ハンマー投げの競技に携わる予定はないものの、「ハンマー投げで鍛えた肩をパン作りにも生かせるねって、友達にも言われているんです。でも競技から離れた途端、きっともう少しやりたかったなって身体がソワソワしちゃうんだろうな」と続ける。高校生活というどこか特別な空間の中で手に入れた様々な物は、彼女のこれからの人生の中でどう輝いていくのだろうか。
問合せ 茂原高校
TEL 0475・22・4505