トランクに夢を詰め込んで

 長生郡一宮町で(有)教育映像を営む齊藤和雄さん(79)。大学卒業後から定年の60歳まで長年勤めた映画会社東映を退職して、翌日には自営業に着手した。以来19年、定年後のやりがいと生きがいを心根に邁進してきた。「子どもの頃から機械いじりが好きだったんです。高校は機械科、大学は電気科の根っからの工業系。それが東映入社時の職場が撮影所の録音部でした。数年後、テレビの影響で映画界は不況に。こんな状況の中、自分で希望をして異動したのが教育映像部門でした」と話す齊藤さん。
 教育映像とは、学校教育・社会教育を目的として制作される映画のことで、ほとんどが一本あたり20分ほど。いじめや性差別など人権啓発に関する題材や、消防・防災教育などジャンルは様々ある。多くの人が触れる教育ビデオは、免許更新の際に見る交通安全に関するものではないだろうか。
 「元々、教育分野に興味はあったんだと思います。社会とのつながりを持ち続け、意義のあることをしたいというのは、定年前から考えていました」
 東映が制作する教育映像を販売する代理店のみを5年ほど続けた後、自宅から車で10分ほどの畑に大型トラックのコンテナを購入した齊藤さん。工作室と名付けたそこで作製したのは、出張講演や移動映写に最適な『プロジェクタートランク』だ。プロジェクター、DVDプレイヤーとアンプ、スピーカーを一体化した総重量は約8㎏。フタを開けるだけで映写準備が完了のため、機械に精通していない人でも安心だ。
 トランクについて齊藤さんは、「コードの長さや配線に多少改良を加えましたが、1個ずつ丁寧に作製しているので、今まで故障したこともほとんどありません。今は期限が切れましたが、かつては特許もとりました。1台あれば画像と音声、200人くらいまで見られます」と続けた。
 いくつもの機材が見事に収納された完成品は、齊藤さんが夢見た定年後の人生を示してくれたといっても過言ではない。この種の製品は日本でただこの一社のみ。自作したものを販売し、妻と息子が経理や配送を手伝ってくれている。おかげで、プロジェクタートランクは県内の大手銀行や全国各自治体の一部で使用されているとか。
 「対象が官公庁や地方公共団体になるため、隙間産業と呼ぶような小さな会社です。でも、退職してからの人生は長いものです。長年思い描いた好きなことで社会貢献できていると思うと、とても嬉しいです」と語る、齊藤さん。今後も会社を大きくすることを目標とせず、プロジェクタートランクを通して同じ映像を大勢の人と見ることで確かな納得と感動の共有をしてもらえることを夢みて、一人の人間として生きている意識を高めていきたいという。教育映像およびトランクについて詳細は問合せを。

問合せ (有)教育映像
TEL 0475・42・2439

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