想いを込めた米作りで人を繋ぎたい

結農園 関谷啓太郎さん 早紀さん

 「いすみ市大野の風景に一目ぼれしました」と話すのは、2016年に新規就農した関谷啓太郎さん(37)と早紀さん(28)。二人とも実家は農家ではない。八街市の自然豊かな環境で育った啓太郎さんは三重県の農業法人で10年間米作りに携わった。東京都世田谷区で育った早紀さんは高校、大学と園芸を学び、千葉県の農業法人に勤めていたが、東日本大震災を機に啓太郎さんの勤める農業法人に移った。出会った二人は結婚。2014年、「自分の考える米作りがしたい」、「農業の魅力を知ってもらいたい」と、いすみ市で農業研修やアルバイトをしながら、「集落に溶け込んで、住民たちに見守られながら米作りができる場所」を探し、いすみ市大野に辿り着いた。
 住まいが見つかると、急いでトラクターやコンバインなどの農機を中古品で揃え田植えをし、9月にはお米を収穫、販売開始。11月からは「都会と田舎を結ぶ架け橋になりたい」と月に一度のペースで田んぼや畑を開放して里山体験会を開いている。いすみ市作田で『星空スペース』という古民家カフェを開く、同年代の移住者夫婦との共同イベントだ。早紀さんは「利益にならない時もあるけれど、お客さんが喜んでくれれば嬉しいです」と笑顔を見せる。
 自然豊かな大野は田んぼの近くの流れのゆるやかな川で遊べるし、ホタルも出る。竹で流しそうめんをやったり、梅を収穫してシロップや梅干し作りを楽しんだり。四季折々のイベントに継続して参加する家族もいて、参加者同士もつながる。「何かの折にふと思い出したら、大野で過ごしたときの気持ちに戻れるような場所でありたい。みんなの拠り所となるような故郷にしていきたいです」

安くて安全な米を

 米作りは「安くて安全なお米を食べてもらいたい」との理想を持つが、無農薬や有機栽培は経費がかかり収量減なので販売価格が高くなってしまう。共同で無人ヘリコプターを使い農薬を撒けば、害虫や病気のリスクが減り、より確実な収穫が見込める。撒かないと病害虫が増えてお世話になっている集落の田んぼに迷惑がかかる。
 でも、農薬は減らしたい。「悩んだ末に空中散布はせずに竹酢液などの自然のもので害虫駆除をする方法を選びました」。他の農家に迷惑をかけない独立した田んぼではホタル米と名付けた農薬を使わないお米を作っている。ただ、栽培面積が少なく、すぐに売り切れてしまうそうだ。「売っているのはお米だけど、それ以上の気持ちも売っているつもり。食べる人を想って作っていることを伝えたい」と早紀さんは得意の絵を米袋一枚一枚に描く。加えて、季節の出来事を描いた漫画の冊子も添える。「喜んでSNSにアップしてくれる人もいて励みになります」
 周囲の人たちはとても温かく、「あそこの田んぼやるんけ」などといって見守ってくれている。田んぼは「使って」と頼まれ、0.8haから1.3haに増えた。「専業で米作りをしていくつもりですが、規模を大きくしなくてもやっていける道を模索しています」。現在、二人ともパートでスーパーや介護の仕事にも就く。「小さな農業を実現したい」と思う一方、規模の大きな農業を考えなければならない「高齢化する集落の人たちの期待も強く感じます。矛盾は抱えるけれど、その希望に応えたいという気持ちもあります」と啓太郎さんは頼もしく話す。「僕たちが土台となって大野に若い人が増えてほしいです」
 結農園のロゴマークはいろいろな世代がつながってほしいとの願いを込めた二人の顔と赤ちゃんとおばあさんの顔。フリーマーケットや市が開催するマルシェなどで販売すると「お土産として買ってくれる人もいます」
 地元産の農産物を使った、添加物を減らした甘くない和菓子作りもはじめた。芋、栗、ニンジン、ソラマメのアンを使ったカラフルなきんつば、花びら餅など季節の和菓子、お汁粉など早紀さんが工夫を凝らした商品を並べる。
 就農3年目の今年、土壌が合わなかったトマト栽培はあきらめ、ナバナとソラマメを栽培する。イノシシ被害にあい、害獣駆除のため狩猟免許も取得した。本気で農業に向き合い、試行錯誤を繰り返す日々。
 昨年12月、「自分たちがやってきたことの意味を確認したい」と応募した第45回毎日農業記録賞一般部門で毎日新聞社千葉支局長を受賞した。二人の就農物語は結農園のホームページにて公開中。

問合せ 関谷さん
TEL 0470・75・9012

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