多くの人と楽しむ里山の生活 いたずら丸太工房 里山風景 木村廣志さん【いすみ市】

作業小屋兼ギャラリーの前でメンバーと。前列右側から2番目が木村さん

 茂原街道の北側・茂原市にある『県立長生の森公園』。その隣接した山あい、押日の昔ながらの集落へ抜ける細道を行くと、木彫りの動物たちがいる看板が見える。木村廣志さん(72)の自宅、『いたずら丸太工房 里山風景』だ。木村さんは、茂原市で活動するチェンソーカービング同好会『くさりのこくらぶ』のメンバー。月1回の活動のほか、自宅でも作品づくりをし、作業小屋にギャラリーを併設。仲間たちも随時訪れ、お茶を飲んだり作業をしたり、憩いの場になっているという。

 木村さんは山形県のリンゴとサクランボの産地、里山の自然豊かな場所で育ったという。「東京で就職後、当時の富里町で建設会社に勤め、家を建てました。しかし定年後は、子どもの頃に遊んだような里山に、好きな過ごし方をしつつ住みたいと思い、富里から通えるこの場所を見つけました」。仕事の現場監督としての技術を活かし、竹林や藪で覆われた山を整備し始めたのは54歳。土木工事で使う小型ユンボを中古で買い、仮設の電気を引き、休日はすべて奥さんとふたりで富里から通った。チェンソーを買い、初めて使ったのもこの頃。「その年に木を伐り終わり、業者に依頼して山を崩し平らな場所を作りました。自分で家周りや山の中を歩ける道を作り、自宅の基礎作りや地下の水道配管などもやりました。家づくりは大工さんに依頼しましたが、急いではいなかったので、時間のあるときに作業してもらい、私も手伝いながら1年かがりでコツコツ仕上げました」。作業小屋や自宅前の崖上に張り出したあずまやなど、すべて完成し引っ越したのは、60歳のときだったという。

崖上に作ったあずまや

 木村さんの自宅は、手前に息子さん夫妻の家、向かいにギャラリー兼作業小屋。自宅は山の上だ。あずまやは、建物を崖から支える柱の設置などを除き、ほとんどが木村さんの作。流し台を入れ、テーブルには囲炉裏も作り、バーベキューなどもできる。ピザ窯も手作りだ。仲間たちが集まる作業小屋は、約7m×11mとかなり広く、こちらもパイプなどの基礎組みは木村さんによるもの。整然と道具や資材が収められ、作品も気軽に見られるようになっている。作品モチーフは動物が多く、小さいクマから、大人の身長の半分ほどの大きなゾウの顔と様々。「私がチェンソーカービングに出会ったのは、10年以上前。今の同好会の前身のクラブが活動していた長柄で、大会が行われたときでした。チェンソーで丸太を彫り上げるのを見て、これは面白そうだと、すぐに入会。しかし月1回の活動だけではなかなか覚えられないので、自宅で練習するようになり、メンバーもここに来るようになりました」。

 木村さんは依頼されて作ることもあるが、寄贈も多い。睦沢町の公民館には町のキャラクターを製作して贈り、毎年正月には地元の公民館の下駄箱に干支を飾って、その年の区長に贈っている。昨年の4月には茂原市の国道沿いにアマビエ像を設置、続いて5月までショッピングプラザアスモにもアマビエ像を置いた。訪れる人たちがあげたお賽銭は10万円を超え、今年1月、アスモで贈呈式が行われ、長生病院へ寄付をした。直近では今月11日、いすみの市民団体へ大小2体のアマビエ改め『トリビエ』像を寄贈。太東埼灯台前で開かれるイベントに仲間と一緒に搬入し、イベント終了後は会場から近いスーパーレオへ大きい像を、いすみ市役所に小さい像を移動・設置した。

整備した敷地内の山道

 木村さんは「いつもメンバーと協力してやるのも楽しみの一つ」と言う。「この集落に入る道や公民館の周囲の道も、藪を刈ったりして整備し、『きれいな里山を』というメッセージの手づくり看板を18カ所に立てました。不法投棄もなくなり、地域の人たちも散歩コースとして楽しんでくれて、環境保全も地区の皆さんと一緒にしています。畑や自分の敷地の山の手入れもあって忙しいですが、チェンソーカービングは、依頼してくれた方が喜んでくれるよう丁寧に作っています。亡くなった愛犬の像を依頼した方は、完成した木像に涙ぐんで感動してくれました。そうしたことが何より嬉しいですし、励みになります」と木村さん。ギャラリーには奥様が作った切り絵やちぎり和紙絵なども展示。見学は無料、体験もできる。希望する方は問合せを。

問合せ:木村さん
Tel.090・3214・5777

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