いすみ市・一宮町・睦沢町が協同で企画~上総広常の実像と伝説に迫る~

 上総国の豪族・上総広常(?~1183)は、鎌倉幕府設立の功労者として歴史に名が刻まれる。NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では、広常が源頼朝の挙兵に呼応し多大な貢献をするも、謀反の疑いをかけられ暗殺されるまでが描かれ、大きな注目を浴びた。今年度、広常ゆかりの地である、いすみ市・一宮町・睦沢町3市町の教育委員会は、中世の東上総地域に生きた上総広常に光を当て、連携して企画を展開している。

睦沢町では特別展

 睦沢町立歴史民俗資料館では、『源平争乱を生きた上総広常の時代と伝説』と題して特別展を2023年1/8(日)まで開催している。広常に関して残された史料は非常に少ないが、同展では地域に語り継がれる伝説に焦点を当てる。例えば、いすみ市布施の『布施殿台城跡(写真上)』は広常の居城跡と伝えられる場所のひとつ。周辺には、広常の子の岳太郎が溺死したという岳太郎淵、これを供養して地域の子どもを見守り続けた『小児守(こじもり)観世音菩薩』(同展示中)のあった観音堂跡、広常の供養塔として伝わる『布施塚の石塔』など、広常にまつわる伝説の地が多く残る。会場では、これら点在するゆかりの地を豊富な資料と解説で紹介している。

上総広常坐像 個人蔵

 また、いすみ市には、広常の家臣、または広常自身の子孫とも伝えられる渡辺姓の集まる苗字講がある。広常十三回忌に始まったとされるこの渡辺講が守り続けている『上総広常坐像』は、11/10(木)から期間限定で公開される。「今回の調査では、様々な伝説が地域の人々の生活に根差し、文献には現れない豊かな彩りと味わいに満ちた世界があることがわかりました」と、同館学芸員の山口文さんは語る。

 他にも、広常が描かれた錦絵や、源頼朝の大願成就のため広常が玉前神社に鎧を奉納したという故事に倣い、江戸時代の一宮藩主加納久徴(ひさあきら)が玉前神社に納めた甲冑『萌黄縅(もえぎおどし)銅丸』など、幅広い資料が展示されている。同館開館時間は、9時~16時半、休館は月曜・年末年始。

一宮町は巡回パネル展主催

 一宮町は、『上総広常伝承と東上総地域』と題して巡回パネル展を開催。広常に関係する詳しい年表やゆかりの地を、写真と文章により丁寧に紹介している。

錦絵大日本六十余将 上総介広常:千葉市郷土博物館所蔵)

 6月と7月に行われた一宮町文化財講座でも広常について取り上げ、定員を上回る人々が熱心に耳を傾けた。一宮町教育委員会・学芸員の江澤一樹さんは、「上総国一之宮・玉前神社を中心とした荘園・玉前荘(たまさきのしょう)を拠点としていた広常。ドラマで注目されたことが、郷土の偉人として再認識される契機となればと思います」と、話す。

 パネル展は現在、勝浦市役所ロビーにて10/4(火)まで開催中。その後、10/6(木)~10/28(金)長生村交流センター、11/1(火)~11/27(日)いすみ市郷土資料館、11/30(水)~12/25(日)御宿町歴史民俗資料館、2023年1/10(火)~1/31(火)一宮町中央公民館と巡回を予定している。

いすみ市ではシンポジウム

 11/13(日)13時~17時、いすみ市大原文化センターにて、シンポジウム『上総広常とその時代|中世の東上総をさぐる|』が開催される。中世史専門家の京都女子大学名誉教授・野口実氏の記念講演『広常を生んだ中世の東上総』をはじめ、埼玉県立歴史と民俗の博物館・学芸員の岩橋直樹氏と鎌倉歴史文化交流館・学芸員の山本みなみ氏の講演が行われる。

萌黄縅胴丸:一宮町玉前神社所蔵・千葉県立中央博物館大多喜分館寄託

 いすみ市郷土資料館・学芸員の嶺島英寿さんは、「シンポジウムでは、鎌倉幕府の公的な歴史書である『吾妻鏡』などの最新研究から、広常ら上総国にゆかりのある武士たちの実像に迫ります」と、説明する。また、シンポジウムにて一宮町教育委員会発行の冊子『上総広常とその時代』(500円)の販売が開始される予定。広常の関係年表などパネル展の内容、野口実氏の論稿を掲載する。

 ドラマの人気もあり、『聖地巡礼』で広常ゆかりの地を訪れる人も増えている。「3市町協同の企画は初の試みでしたが、各々の得意分野を生かし協力することができ、大変有意義でした。これまで一般にはほとんど知られていなかった上総広常を多くの人に理解してもらえる機会となればうれしいです」と、嶺島さん、江澤さん、山口さんは口を揃えて話す。イベントはいずれも参加費無料。詳細は問合せを。

 

 

(左から)嶺島さん、山口さん、江澤さん

・特別展
睦沢町立歴史民俗資料館
Tel.0475・44・0290
・巡回パネル展・冊子
一宮町教育委員会
Tel.0475・42・1416
・シンポジウム
いすみ市郷土資料館 (事前予約要、現在受付中)
Tel.0470・86・3708

 

『この記事のご感想をお聞かせください』


男性女性


10代20代30代40代50代60代以上


とてもよかったよかったどちらでもないよくなかったとてもよくなかった


毎週読んでいる月に2回ほど読んでいる月に1回ほど読んでいるあまり読んでいない

関連記事

今週の地域情報紙シティライフ


今週のシティライフ掲載記事

  1.  コロナ禍で中止していた観音寺(鴨川市)の『ひなまつり』が3年ぶりに開催される。慶応元年(1865年)、現在の鴨川市に生まれ日本のためにと自…
  2. 【写真】(前列左から)会長・後藤さん、講師・片岡さん、     (後列左から)会員の常盤さん、後藤さん、市原さん、中村さん …
  3. 【写真】工房の庭にて。小原さん(左)、齊藤さん  睦沢町下之郷に2人の陶芸家が住んでいる。『夢楽工房』を共同で主宰する齊藤…
  4.  寒い冬の真っ只中、皆さんはどうお過ごしでしょうか?家にこもりがちで、外に出ない方も多いかもしれません。こんな時こそ、ウインタースポーツとし…
  5.  秋晴れのなかの11月6日、茂原公園の広場をスタートに『第19回千葉県ウォークラリー大会茂原会場』が開催された。毎年開かれているこの大会も、…
  6.  ツグミという野鳥をご存じの方も多いだろう。体長23~25㎝、白い眉斑で、頭から背面は黒褐色。羽が茶褐色で、胸から腹にかけてはうろこ状の黒い…
  7.  小湊鐵道光風台駅から、西方に歩いて15分程にある鶴峯八幡宮。鎌倉時代・建治3年(1277)に本宮大分県の宇佐八幡宮より御分霊を戴き、お祀り…
  8.  昨年も、『こでまりの夢』をお読みいただきありがとうございました。昨年は17年間のコラムをまとめ、出版することが出来ました。これもひとえに、…
  9. シティライフ編集室では、公式Instagramを開設しています。 千葉県内、市原、茂原、東金、長生、夷隅等、中房総エリアを中心に長年地域に…

ピックアップ記事

  1.  コロナ禍で中止していた観音寺(鴨川市)の『ひなまつり』が3年ぶりに開催される。慶応元年(1865年)、現在の鴨川市に生まれ日本のためにと自…

スタッフブログ

ページ上部へ戻る