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ふるさとビジター館 自然探訪~不思議な形の花・イカリソウ~

 里山散策で、見慣れない不思議な形の花が葉陰に垣間見えた。近くに寄って見ると、葉腋から垂れ下がっている。紅紫から白色まで10数株が群生していた。メギ科イカリソウ属の多年草、イカリソウ(碇草)であった。
 船の碇に見立てての名前で、高さ20~40センチ。葉は2~3回三出複葉(さんしゅつふくよう)で、茎の先が分岐した葉柄に3枚の小葉がつく。長さ3~8センチの小葉はゆがんだ卵形、ふちに刺毛がある。花は4~6月に咲き、大きさ2センチで花弁は4個、基部から白い管状の距(きょ)が突出している。
 里山の野草は陽の当たり具合、木漏れ日の量と時間帯、積もった落ち葉の量と湿り具合など、季節の環境が少しでも異なると植生が異なる。小さな木立や下草がきれいに刈り取られた林縁では多様性が目立つ。その中の群生は限られた狭い区域となり、10数株でも群生と言われる。野原の野草とは隔たりが大きい。それだけに繊細と感じ、育ててみたいと魅入ってしまう人が盗掘していく。
 たくさんの種類の山草を並べ同じ環境で育てると、ほとんどが育たない。生息環境が合わないのだ。里山の多年草は繁殖率が劣る。絶滅危機にならぬよう、いつまでもそのままに残っていればこそ、自然は豊かで美しい。
(ナチュラリストネット/野坂伸一郎)

◇ナチュラリストネット/自然を愛する仲間の集まりです。豊かな自然環境をいつまでも永く残したいと活動しています。 Tel.080・5183・9684(野坂)