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二世帯住宅?
- 2015/7/24
- シティライフ掲載記事, 市原版

遠山あき
初夏、月崎駅は「ツバメの駅」になる。いくつもの巣があり、待合室はツバメが占領してしまう。二年前だったか、ツバメの群れが珍しく争っているのにぶつかった。いつもは大人しいツバメが、激しく争っているのに驚いた。どうやら彼らは巣作りでもめているらしい。
巣立ったツバメは冬が来ると暖かい国へ渡っていく。数千キロもの遠い国へ長い旅をして。そして日本が初夏になると、また戻ってくるのだ。不思議なことに彼らは必ず自分の生まれ育った巣のところへ帰るという。だから昔の農家では「また去年のツバメが帰ってくるから」と古巣を大切に残しておいたものだ。
してみると、このツバメたちはこの駅で生まれたのだろう。そうか、分かった!元の巣へ帰ってきたら、去年巣作りをした親も帰ってきていて、どっちも自分の古巣なものだから、お互いに所有権を主張しているのだ。すでに親は古巣の修繕を始めていた。壊れた場所へせっせと泥を運んで整えていた。成鳥した子ツバメも負けてはいられない。自分の育った家なのに!と争っている。
そこへ列車が来て、私はツバメに心を残して乗り込んだ。帰りのときに、急いで列車を降りツバメの巣を見上げた。なんと!彼らは古巣の隣にくっつけて、巣作りを始めているではないか。雌と雄と仲良くせっせと泥を運んでいる。「まあ、二世帯住宅ね! 頑張って、仲良くね!」
十日ほどたって、また駅へ行った。彼らのその後がしきりに心にかかっていた。あらー!見ると新しい巣、おそらく子ツバメが作った巣は廃屋になっていた。話合いはうまくいかなかったらしい。彼らはどこかに新しい巣を作ることにしたのだろう。ツバメの二世帯住宅に微笑ましい期待をかけていたのに、残念……。
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