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房総往来
- 2017/6/9
- シティライフ掲載記事, 市原版

鎌倉のメルヘン 山里吾郎
住みたい“と思うまちの一つが鎌倉だ。「頼朝伝説」「鎌倉道」を持ち出すまでもなく房総との縁が深い。個人的にも人との交わりで、忘れてはならない地になっている。一昨年、鎌倉の地に眠る友のことを書いた。今回は幼少期を過ごした長崎から繋がる人との縁で、北鎌倉を旅した▼長かった桜がようやく終わりかけた4月下旬、午前7時過ぎに五井駅から内房線直通の横須賀線に乗り込んだ。せわしげな通勤客を横目に、乗り換えなしの快適な車窓を眺めながら約2時間の旅程▼お目当ての『美術館開館までは少し時間があるな』と思いながら北鎌倉駅を降りると、すぐに円覚寺の山門が目に飛び込んできた。北条時宗が創建した臨済宗本山。今も「心の寺」と呼ばれる古刹をまずは拝観。そこから線路沿いに歩いて約10分、目的の「葉祥明美術館」はひっそり、樹木の中に佇んでいた▼葉さんは熊本市の出身。日本ばかりでなくイギリス、フランス、カナダなど世界で作品を発表している絵本作家。「隠れ家のような美術館が北鎌倉にあるよ」と聞き、「ぜひ訪ねたい」と以前から思っていた▼幼少期に過ごした長崎には家族同様に育った兄“がいる。3年前に訪ねた長崎で、葉さんがこの兄嫁の実弟であることを聞いた。「素敵な作品なの。一度見に行って」▼美術館ではちょうど「赤毛のアン」を題材にした原画展が開かれていた。抜けるような青空に緑と黄色の草原。小説の一こまをそのまま切り取ったように、どの色も淡く繊細、まさにメルヘンの世界だ。『また大好きな作家が1人増えたなぁ。今度はぜひ本人にお会いして…』。心からそう思った。