ふるさとビジター館 いちはら自然探訪 小さくとも可憐なヒメハギ
枯草で一面になった崖に何か芽生えていないかと眺めていた。崖といっても急こう配に造成された法面で、上には林が広がり、自然豊かな所である。
日当たりが良い所に、ハギ(萩)の枝をミニチュア化したかのようなとても小さな茎が出ているのに気付いた。太さ1ミリもない茎は、赤褐色で細くてかたく、高さは5センチほど。大きさ1センチに満たない葉は、碧々して互生の卵型。小さくとも枯草ばかりの中にあっては、碧さが目立った。3株見つけたが葉と茎だけで、花はもう終わったのか、まだなのか、葉だけでは種類の同定ができなかった。
4月になってようやく花が咲いているのに気付いた。淡紅色の筒状の花で、先端は白っぽい房状、両脇の花びらのような萼片も淡紅色。1センチに満たない小さな姿は可憐で美しく、まるで鳥が飛び立つようだ。ヒメハギ(姫萩)という名前だった。
10センチほどに伸びた茎が数本出ていた。
常緑の多年草なので、放っておけば高さ30センチぐらいの株になるようだが、定期的な草刈りが行われる場所なのでそこまで育たないようだ。花が咲く時期には、周りの草が芽生えてあまり目立たない。よく訪れる場所であり、とても特徴のある葉と茎と花に今まで気付かなかったのは、その小ささにあったようだ。夏の始まりまで咲き続けるようだが、ほかの草に隠れて掻き分けて探さないと見つかりそうもない感じだ。
暖かい日差しの日には、通勤、通学の道すがら途中で立ち止まったり、車から降りてほんの数分でも枯草を眺める余裕があれば、葉と茎だけでも見つかるかもしれない。その場所に目星をつけておけば、春に素敵な出会いが待っているでしょう。市原の自然はとても豊かなのだから。いつまでも大切に残していきたい。
ナチュラリストネット/野坂伸一郎