季節のスケッチ

季節のスケッチ
俳画と文 松下佳紀

「ほら、そこに冬苺」と散歩仲間に知らせたのは軽い山歩きをしていた時だ。「冬苺?苺?」と彼は私の指す所を見た。そこには一センチ大の赤い実が濃い緑の葉陰に光っていた。「へえ、甘ずっぱくて旨いや、この年まで知らなかったなあ」。七十歳の彼は口に何個か含みながら言った。ほぼ同世代の私もつい最近、冬苺を人から教えられたばかりだ。冬苺はバラ科だが刺のない常緑蔓性植物。山中の半日陰の場所でよく見かける。食べてみれば味わい深いが、何しろ小粒だし摘みにくいので、あまり食べた気がしない。人間が喜んで食べるものではなさそうだ。それにしても目ざとい鳥たちには御馳走であるはずの冬苺が、冬の山中にいつまでもあるのは不思議だ。

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