三和の史跡

三和の史跡
旧養老村を巡る物語

「古代、千葉県は麻が採れた豊かな土地『総の国』でした」と始まった歴史講座。昨秋、三和コミュニティセンター主催『三和の史跡 養老編』が開かれた。講師は市原市新堀で生まれ育った鈴木仲秋さん(78)。子どもの頃から考古学に興味があり、土器や石器を採集して歩いたという。高校教師を経て県立房総のむらなどの館長を歴任し、現在、江戸川短期大学名誉教授である。午前中の講義のあと午後から参加者20名と同センター周辺の史跡を散策する予定であったが、あいにくの雨で終日座学となった。
「歴史を知るのに時間を遡れたら楽しいでしょうね」と市原市の歴史を振り返ったあと、鈴木さんが読み解いたのは同センター周辺の地名だ。明治22年の町村合併により新巻村、磯谷村、大桶村、川在村、土宇村、櫃挾村、二日市場村、松崎村、山田村は養老村となった。昭和30年に養老川西側の市西村、翌年に海上村と合併しできたのが旧三和町である。その後、他の町村と合併して市原市となった。「養老はかつて『与宇呂』とも呼ばれ、緩い傾斜地と考えられます」と話した鈴木さん。今の中高根あたりを指す鎌倉時代の史料もある。しかし「なぜ養老村と名付けたのかはわかりません」とのこと。
『大桶』には軍荼利山甘露寺がある。明治時代の上總町邨誌によると『長柄山村(現長柄町)の胎蔵寺にある舎利塔は大桶村明星寺より寄せられた。大桶村に古瓦など発見するところありそれが明星寺跡だ』とある。「村の古老に聞きましたが、寺跡がどこにあるのかわかりません。また、猫山に毎晩、猫が集まって酒盛りをしたという言い伝えがあり、相川村の地名も登場します。大桶の堰には耳のあるウナギがいるそうで、見ると不吉なことが起こるそうです」と伝承話も加え続ける。乳清水は「穴のあいたお椀や竹筒を供え、清水を飲むと産後の女性は乳がでるそうです」と紹介した。 
 大城台砦跡、鵜城、代官塚や萩の台古墳など遺跡が多く残る『土宇』。「かつて津中だったのでは。津とは港のこと。流れの急峻な養老川も土宇から流れが緩やかなので荷の積み下ろしをしたのでしょう」と推測する。『川在』は前述の町邨誌に『村の西方に水飲み坂あり』とある。「日本武尊が清水を飲んだと伝わる坂。磯ヶ谷からの坂は2つ。どちらでしょうね」と日本武尊伝説の謎解きから高滝の地頭の娘の話へと地元にまつわるお話を次々に繰り広げる。
『磯ヶ谷』の門脇遺跡からは『海里長』と墨で書かれた土器が発見された。磯ヶ谷八幡神社にある江戸時代の石仏の阿弥陀如来について「神仏習合で祀られています。明治の廃仏毀釈でこのあたりの寺や仏像も壊されました」と少し残念そう。「『新巻』は新牧で馬を放牧していたのでしょう」と話した。『山田』にあるのは三山塚や富士塚。「周辺に溝のあるのが古墳。近世塚にはありません」と見分け方も教えた。
 午後からはスライドを上映して「登るとたたりがあるらしい」と伝わる『松崎』の丸山塚古墳や「とてもいいお顔ですね」と鈴木さんが語る『櫃挾』の仏像などについて講義が続いた。『二日市場』は「かつて養老川は東側に蛇行していたので、西岸にありました」と現在の地形と古い地図を比較。二日市場廃寺跡出土の奈良時代の2種類の瓦の特徴も説明した。見学予定だった石造物も映し、優しい眼差しを注ぐ。同センター右手の県道を渡ったところにある庚申塔は「道標も兼ね、両脇に牛久、八幡宿とそれぞれ彫られています」。同じ道路の並びにある中華料理店脇の墓地入り口に並ぶ石仏は「向かって右の地蔵様は元禄年間のもの。宝珠と錫杖をもち人々を地獄から救う仏。隣に阿弥陀如来像、お地蔵様、弥勒菩薩像と順に並んでいます」と話した。歌人でもある鈴木さんは同じ墓地に発見した明治44年の句碑の拓本も嬉しそうに広げた。
 史料に登場する人物を「このあたりに住んでいたのかもしれませんね」と知人のように紹介し、発掘エピソードもおもしろく語った5時間は瞬く間に終了。有木城址のそばに住む『総の国をかたる会』に所属する男性は「地域の遺跡を知り、地名を読み解いていくのは楽しい」、三和に住む女性は「よく郷土史の講座に参加している。先生のユーモアあふれるお話で長時間でも飽きなかった」と感想を述べた。

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