冬鳥として、広い湖沼や海岸に渡ってくるカンムリカイツブリという野鳥がいる。カモの仲間より一回り大きいがカワウより小さく、首が長くスラッとした体型の野鳥である。ずんぐりしたカモの仲間とは異なるので、容易に見分けることができる。
秋に北方から渡ってきた直後は、全体が白っぽい冬羽で覆われ、色彩もカモとは異なる。また、群れでいることはなく水面にポツリポツリと浮かんでおり、意外と白色が目立つ。市原では冬のあいだ山倉ダム、長柄ダム、養老川河口などで普通に見ることができる。
カモの仲間やカワウのように、陸や木に上がることはまれだ。常に水に入り、泳ぎと潜りを繰り返す。しかし、足の指の間に水かきがあるわけではない。それなのに、どうして上手に泳いだり潜ったりできるのか? それは、足の4本の指すべてに木の葉状の弁膜がついており(弁足と呼ばれる)、それが船のスクリューのような役目をするためと言われている。
得意の潜水を繰り返し、小魚類を好んで採食する。ほかには水生の甲殻類、昆虫などの水生生物を採食するようだ。私が潜水時間を計測したところ、バラツキはあるものの30~50秒程潜っていた。潜水性のカモや他のカイツブリ類に比べても潜水時間が長いと言われている。
春が近づくに連れて白い冬羽から繁殖のための鮮やかな夏羽に変わっていく。頭頂には、名前の由来となる黒い冠羽、首の周囲には、えり巻き状で栗色の飾り羽が現れる。すっかり夏羽に変わる3~4月には北方へ旅立っていく。
周囲を散歩できる山倉ダムは、間近で観察できる格好の場所だ。双眼鏡を首に下げ、散歩がてらにカンムリカイツブリやカモを観察してみよう。
ナチュラリストネット/岡 嘉弘