地元の歴史と自然、再発見

 4月8日、有秋公民館主催の『有秋散歩・有秋緑の散歩道と歴史』が行われ暖かい春の日差しの中、約20名が参加した。全6回シリーズで第1回目のこの日は薬王寺コースを歩いた。
 市立有秋東小学校の北西、角の交差点に薬王寺(真言宗)の入り口がある。数々の石仏が建ち並ぶ中に144センチの『薬王寺浮彫六地蔵石幢』がある。造立は寛永20年。市内最古のもので、地獄、餓鬼、畜生、阿修羅、人間、天上の六つの苦しみから安楽の世界に導くといわれている。坂を上ると左手に薬王寺本堂、さらに階段を上ったところに薬師堂があり、木造寄木造りの『薬師如来坐像』が安置されている。釈迦の生誕日とされる4月8日は1年に1度のご開帳の日。高さ71センチ、右手の肘を深く曲げて手のひらを正面に向け、左手は膝の上にのせて薬壺を持っている同像を拝むことができた。静かなお顔、髪の生え際が直線的なところは平安時代後期の藤原仏の特色だ。また、像の隣に収蔵されている、市指定文化財『薬王寺の算額』にもお目にかかることができた。算額とは、日本古来の数学の専門家が解いた難問を額に描いて奉納したもの。問題が解けたことを感謝するとともに、解き方を広く人々に伝える役割も担っている。
 薬王寺参拝のあとは向かい側にある『竹・いろりの里』の桜の下でお茶をいただき一服。鍋敷きや写真立てなど、竹細工の小物を購入する人も。続いて山道を上り、杉、竹林を抜けると一面に広がる黄色い菜の花畑と大きな桜の木『大俵1本桜』が姿を現した。満開は通り過ぎ、葉桜になっていたが存在感はたっぷり。谷垣敬次郎さんとボランティアの方々が1年がかりで整備した竹林もあり、竹林の間から垣間みる桜と菜の花の風景も趣き深い。菜の花の甘い香りが漂う中、谷垣さんは「桜は恋人。花が散っても大好きです」と熱い思いを語った。テーブルとベンチもあり、弁当を食べながらくつろぐ観光客の姿が見られた。参加者は「1年に1度のご開帳の像を見ることができた。『大俵一本桜』を見ながらの甘酒もおいしかったし、最高でした」と満足した様子で帰路に着いた。

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