ふるさとビジター館 いちはら自然探訪

ヤマトオサガニ 泥質干潟の代表格

 市原市の海岸は、埋立てにより多くの干潟が姿を消してしまいましたが、それでも所々に自然の干潟が残っています。干潟は堆積している土砂の粒径により、主に泥質干潟、砂質干潟に分けられます。市内に残された干潟の多くは泥質干潟であり、そこに生息するカニの代表格がヤマトオサガニです。
 甲羅の形は長方形に近く、大きさは約3~4センチ。眼はマッチ棒のように長く、水中に入ると、潜望鏡のように水面から眼先を出します。この眼は巣穴に入るとき、甲羅に収納できるようになっています。オスのハサミは白色で大きく、メスは小さく、ハサミをあおぐように動かして泥をすくい、泥の中の有機物を口でこして食べます。市内では、養老川、椎津川、前川、国道16号沿いの水路などの泥質干潟に生息し、個体数は多いように思いますが、生息場所が限られており、千葉県レッドデータブックでは一般保護生物Dに指定されています。
 初夏の日差しがまばゆい日、養老川河口の干潟を訪れました。あちらこちらに無数のカニがいて、まさにカニの楽園です。そんな中、水はけが悪くひざまで泥に埋もれそうな場所に、乾いた泥で白っぽい色になったヤマトオサガニが、集団でじっとしていました。近づくと素早く巣穴に逃げ込みましたが、しばらくすると水面に潜望鏡のような二つの眼が所々に出てきて、周囲の様子を伺っていました。
 県外のある河川の河口では、砂の堆積により泥質干潟が減少し、泥質を生息環境として好むヤマトオサガニが激減したそうです。人間にとって何とも感じない少しの環境変化であってもカニたちにとっては絶滅の危機となります。残されたカニたちの小さな楽園がいつまでも残されることを願います。

ナチュラリストネット/時田 良洋
ナチュラリストネット/自然を愛する仲間の集まりです。市原の豊かな自然環境をいつまでも永く残したいと活動しています。TEL 080-5183-9684(野坂)

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