- Home
- 外房版, 市原版, シティライフ掲載記事
- 学校給食文部科学大臣賞(個人)受賞 「健康の基本は食。食の大切さを伝えたい」
学校給食文部科学大臣賞(個人)受賞 「健康の基本は食。食の大切さを伝えたい」
- 2015/2/13
- 外房版, 市原版, シティライフ掲載記事
山中裕子さん
市原市牛久在住の山中裕子さん(61)が、平成26年度学校給食文部科学大臣賞(個人)を受賞した。同賞は学校給食の普及と充実を図るため、その実施に関し優秀な成果をあげた学校及び共同調理場を「学校給食優良学校等」として、個人及び団体を「学校給食優良功労者」と表彰するものである。
山中さんは牛久小から牛久中、市原高校を卒業すると県立の栄養専門学校へ進み、栄養士として千葉市内の小学校に着任した。何故、地元の市原市ではなかったのか尋ねると「給食を作る側と食べる側の距離が近く、お互いの気持ちが何より通じ合えるし、子どもと直接触れ合えると思って」と話す。実家は蕎麦屋で子どもの頃から店の手伝いをしていた。母親は食べ物に気を遣う人であったという。小学校に上がった頃、ちょうど学校給食が始まり「給食に興味を持ち、漠然とこういう仕事やってみたいなという気持ちが芽生えていたのかもしれません」と振り返る。高校在学中には学校給食の仕事に就きたいと考え進路を決めた。
幸町第二小学校を皮切りに、蘇我小、生浜東小、泉谷小、松ヶ丘小、椎名小と千葉市内の学校給食に携わってきた。学校での食育推進と給食関係者の資質の向上を図るため開催されている全国学校給食研究協議大会では、平成25年度、三重県において統括主任栄養士として椎名小での個別指導の分野で発表をした。昨年、定年を迎えたが、椎名小に再任。「私にとって子どもたちと触れ合えるのが楽しい時間」と微笑む。
学校給食に関わり40年。変化があったのは、平成12年に厚生省・農林水産省・文部省が共同で食生活指針を策定して以降。平成17年、食育基本法が成立し、翌18年に食育推進基本計画が制定された。これは、近年偏った栄養摂取や朝食欠食など食生活の乱れや肥満・過度の痩身願望など、子どもたちの健康を取り巻く問題が深刻化していることに加え、食を通じて地域を理解し食文化の継承を図り、自然の恵みや勤労の大切さなどを理解することも必要であるという現状を踏まえて施行された。
これにより、子どもたちが食に関する正しい知識と望ましい食習慣を身に付け、自ら食を選択することができるよう、学校でも積極的に食育に取り組むこととなった。また、同時に学校での食育を推進させるためには、指導体制の整備が不可欠であると、同年、栄養教諭制度も開始された。同制度は、それまで栄養士または管理栄養士の資格がある栄養職員が学校に配置され、担任教師の手伝いをしていたが、この資格に加え大学等で教員免許を習得し栄養教諭の免許を取得した栄養教諭の配置を増やし、学校での食育推進に中核的な役割を担わせようというもの。
そうした社会情勢に応じた職場環境の変化はあったが、山中さんが終始貫いてきたことは変わらない。「健康の基本は食。食育を推進するには、学校だけでなく家庭や地域との連携も大切」と考え、食に関心を持ってもらうため給食便りに学校の食育の様子を載せたり、親子料理教室を開くなどしてきた。そのうえで献立を考える時には、食物アレルギーについてはきめ細かい対応を、地元の食材を使うよう、また子どもの嗜好も考慮しつつ、安心・安全で魅力ある給食作りに努めてきた。
「私の世代の給食は脱脂粉乳にコッペパン、紙に包まれたマーガリンの印象が強く残っていますが、その後、瓶の牛乳に変わり米飯も少しずつ取り入れられ、今では米飯は週に3回以上になりました。手軽に食べられるものは家庭でも用意できるので、給食では和食を取り入れています。家庭では欠乏しがちなカルシウムも和食では補える。和食は素晴らしい。これからも、学校給食を食育の生きた教材にし、食育を推進していきたいですね」
更に、「食育基本法成立前までは、実際に子どもたちと接することができるのは、給食時間と配膳の時でしたが、成立後は子どもたちに直接指導する機会が増えて嬉しい」と話し、「食べ物がたくさんあって選べる半面、多くの食べ物を捨ててもいる今、命をいただいているんだということを教えるのも私の使命のひとつだと思っています」とも。
小学校に上がったばかりの1年生に「給食室の探検」と現場を見せたり、生活科の授業でサツマイモの栽培と収穫そしてリース作りと調理実習を。4年生は総合的な学習の時間で大豆を栽培して味噌を作り、5年生になった時、家庭科で作った味噌を使い味噌汁を作る。5年生の社会科で水産業を学ぶ際には、発展授業として千葉県水産課の協力を得て、銚子市から講師を迎え魚のおろし方や調理方法を教わった。教科と連携しながら計画的に体験活動を取り入れた。これらの体験を通し、子どもたちは食に関心を持ってきているという。「苦手な野菜も自分たちで種から育て収穫し調理まですることで、食べるようになり偏食改善にもつながるし、大豆と枝豆が違う野菜だと思っていた子どもが、枝豆が熟せば大豆になると認識できたりもする。今の子どもは食べ慣れているものが好き。食べたことのないものは食べない。だから食歴が乏しい。私は、たとえば家庭で食べることの少ない煮豆やうのはな炒り、行事食などを献立に加え、色々なものを食べさせて食歴を広げてあげたい」と、凛とした表情で語った。