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季節のスケッチ
- 2015/2/20
- 市原版, シティライフ掲載記事
俳画と文 松下佳紀
寒月の冴え返る夜、どこかの犬が長々と吠えていた。ウォオーンという声は狼の遠吠えのようだ。とはいえ私は狼の声を聞いたことはない。それは子供の頃に読んだ物語か映画で聞き覚えたものだ▼狼は人畜に有害と明治の末期には退治され、今や日本にはいない。が、その有害説は外国伝来のもので日本には当てはまらず、現今の鹿や猪により増え続けている田畑や山林の被害は、頂点捕食獣である狼が絶滅し、生態系が崩れたからという説もあり、生態系を元に戻すために狼を導入しようと唱える団体もある▼その当否は別として、私は勝手な空想をする。本当のところ狼の末裔は、今も山中深く棲息し、時に応じて誰かの耳に届く音波を発するのだと……。