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ご朱印集めを生きがいに本州・四国を練り歩く達人
- 2015/4/10
- 市原版, シティライフ掲載記事
石渡栄さん
袖ケ浦市在住の石渡栄(いしわたさかえ)さん(72)、自宅の居間のテーブルに並べられたご朱印帳は10冊をゆうに超える。「一番記憶に残っているのは、やはり最初に集め始めた四国八十八箇所巡りかなぁ」と大切そうに朱印を眺める石渡さんが、ご朱印集めを始めたのは約15年前。小湊鉄道株式会社に勤めていた現役時代から、旅行が好きであちこちを訪れていた。そして、ご朱印を集める石渡さんにつられるように、友達が3人同行することになったのは、それからすぐのこと。「ただの旅行だと、個人的な事情を優先してパスしてしまうこともあるかもしれない。けれど、私たち4人はご朱印を集めるという目的があったので、年2回ですが気候のいい春と秋を狙って様々な場所を歩きました」。
四国八十八箇所は4回かけて制覇、初めは現地でタクシーを利用した。だが、乗車料金はかかるばかり。2回目からは、仲間の1人が所有する乗用車に4人で乗り、千葉から車で赴いた。夜の10時に千葉を出発をして、交代で運転する。現地に着くのは朝で、2泊か3泊して帰路につく。「ご飯も初めはお店に入ったんですけど、そうすると2時間くらい居てしまう。時間がもったいないので、ゆっくりするのは夜の宿にして、昼間はコンビニでおにぎりを買って車の中で食べることもしょっちゅうでした」と話す石渡さん。その後、関東1都6県にある八十八箇所巡り。源頼朝により発願され、源実朝が西国の霊場を規範として札所を制定したと伝えられている坂東三十三箇所巡り。埼玉県の秩父三十四箇所巡りと旅を重ねた。西国と坂東、秩父の3つを合わせて100観音といわれており、1冊につき20個は印が押せるご朱印帳が埋まっていく。今となっては大きな『宝物』であるそれは、石渡さんの自信にもなっている。
旅を続けることで得たのは思い出と自信だけではない。「なにより、仲間がいて本当に幸せだと思っています。また、観音様や、その土地の歴史を聴くことで興味の幅が広がり、坂本竜馬など過去の人物についての本を多く読むようになりました。健康なのもありがたいですね」と豪快に笑う。5円玉を集めては紐に通して旅に持参し、賽銭にした。旅から帰ると、仲間が思い出の写真をまとめて本にしてくれる。1つ1つを眺めていると、時間はあっという間に過ぎてしまうという。その後も、石渡さんは鎌倉33観音・越後33観音・北陸33観音・会津33観音など数えきれないほどの土地へ行き、甲州街道や東海道五十三次、日光街道など5街道も制覇。中山道を回るのには2年9カ月の月日をかけた。『歩く』という魅力は何なのか。「中山道などは旅行会社の企画ツアーに参加して制覇したんですけど、完歩するとハンコを押してもらえるんです。1つ抜けてしまうと困るので、風邪を引いた時にも多少無理して行ったこともあるんですよ」と努力も明かす。それに加えて、「なにより歩くことが生活の一部になっているんですね」としみじみと語った。制覇する達成感も魅力のひとつに違いない。歩くことが健康にもつながった。
旅行会社の『御成海道を歩く』、『木下街道を歩く』など他の多くの企画にも参加してきた。完歩することでハンコを押してもらえる紙には、一言感想を書けるスペースがあり、石渡さんの記録がしっかりと残されている。『雨がきつかった』、『春と冬が逆転。寒かった!』など天気のことや、『箱根は行ったけれど、知らないところはまだある』などの感想がつづられている。他にも、『友達と一杯やりながら歩く』という一言も。思い出したように笑いながら、「みんな日本酒が好きなんですよ。たくさん歩いて、夜は温泉とお酒を楽しむ。退職してから多くの土地を訪れ、とても満足した時間を過ごせました」と話す石渡さんの元気の秘訣は、「色んな所に顔を出して、仲間と話すこと。心にも身体にも余裕ができるので、不思議だけど忙しいから元気!」なのだとか。企画旅行のウオーキングで出会った仲間とは、今でも交流が続いている。旅で得た思い出を胸に、これからも石渡さんは力強く歩いていくことだろう。
問合せ 石渡さん
TEL 0438-62-3563