里山と人をつなぐ 家族で山林を開拓し、森の中に楽園レストランをオープン

「自然の中で四季を感じながら、くつろいでもらえたら」
ふらんす屋オーナーシェフ 坂本 義一さん(山武市)

 通りから一本中へ入るとクリニックや保育園があり、その先に森をバックに建つ住宅とレストランが見えてくる。3年前にオープンした洋食店と、店のオーナー夫妻が暮らす家だ。オーナーシェフの坂本義一さん(65)は茨城県出身。調理師学校卒業後、コックを目指し5年間、地元の潮来や鹿島のレストランで修行を積み、その後、東京のホテルで腕を磨き、27歳の時に独立し習志野市での開業を経て、移住した八街市でフランス料理店をオープンさせた。
 当初、「ガチガチのフレンチ」だったが、周辺には成田のホテル以外に本格的なフレンチの店はなく、空港が近いことから「ホテルより安くフレンチが食べられる」と、客室乗務員らの支持を得たが、まもなく一般の人にも受け入れられるよう、フレンチベースの洋食屋へと路線を変更し以後32年間営業。
 60歳になったら店の規模は縮小しのんびりとガーデニングを楽しむ暮らしがしたいと、57歳になると500坪くらいの土地を探し始めた。しかし、なかなか希望に合う物件が見つからず、山武市まで範囲を広げたところ、現在の場所を見つけ気に入って購入することに。当初の予定より広い2千坪の山林だった。この場所を見た時、森の中のレストラン構想が閃いた。「私と妻、息子や娘、そして店のオープンを待たず亡くなってしまった母と家族総出で、5年かけて山林を開拓して、店と自宅の建設予定地を造成し、同時に畑や庭も造りました。伐採した木で庭の休憩所のベンチやテーブルを作ったりも。私は子どもの頃、実家の山の枝払いをしたことはあったけれど、チェーンソーや草刈り機を使ったのは初めて。大変でしたが、今、思えば自分たちで開拓したからこそ土地に対する愛着が強くなったと思います」と、坂本さんは当時を振り返る。
 森に注ぐ陽光や吹き渡る緑の風、鳥のさえずり、敷地内の庭に植えられた木々や草花から、四季を感じてほしいと話す。「ここに来て、美味しく食事を召し上がって、庭を散歩したりして、のんびり過ごしてもらえたら」という思いから、春に『さくらまつり』、初夏には『紫陽花まつり』、夏にはビアガーデン、秋に『もみじ祭り』、昨年からハロウィンのイベントも催した。季節のイベントを通して、自然と触れ合ったり草木を愛でる機会を提供しようと考えている。桜は元からある山桜や上溝桜に加え、河津桜や染井吉野など5種類を植樹。35本の桜がある。紫陽花も「珍しい種を見つけると、どんどん植えていった」と、多種多様な300株が自慢。
 敷地内の菜園で育て収穫した野菜や果物は新鮮さが身上。料理やデザートの食材にするのだが、自然豊かな土地ゆえ野生動物も多く、「いいところまで育つと、ハクビシンにやられちゃう」被害も。そのため、メインは地元JA産野菜を使うようにして、常に鮮度の良い食材で料理を提供するように心がけている。
 シェフ歴38年。初めは独身で来店したお客さんが結婚して子どもと、更に孫が生まれてと三世代での来店もしばしば。店を移転しても変わらず通ってくれるお客さんが多い。その理由を尋ねると「そうですね。心を込めて作る料理だからかな。絶対、できあいのものは使わない。すべて、一から作る。たとえば代表的なものなら、デミグラソースは15日かけて作るし、ハンバーグにしても塊肉から品定めして、これを挽肉にするところから始め、コンソメスープ等は煮込む前に鶏ガラ出汁で仕込み、それから牛肉で煮込むなど。ホワイトソースも然り。時間と手間暇かけて作ります」とのこと。
 薪ストーブが置かれた梁のある高い天井の店内に隣接して、屋根付きガーデン席(ガーデンカフェ)もある。外はペット可。パティシエの娘さんがデザートや菓子作りを担当し、より一層スイーツの充実も目指す。
 32年間、店を営業し生活もしてきた八街市で社会人講話の講師を依頼され、現在地に移住するまでの5年間の開拓と、己の夢の実現について語ったことがある。そして今、かつての夢を叶え、自宅敷地内にレストランはもちろん、畑や庭仕事ができる土地を手に入れた。「若い頃から常にステップアップして生きたいと思っていた」坂本さん。「妻とふたりで、こぢんまりと店をやる」という当初の目論見は外れてしまったが、想定外だった広大な森を生かす店づくりをと新たな目標を持つに至った。「これからは、このロケーションを生かした、それでいて、居心地の良い楽園のような食や遊びの場を演出していけたら」と話す。4月末にドッグランが完成予定。庭に子ども用の遊具を設置することも計画中。
 今年の『さくらまつり』は、明日、4月3日(日)(日10時から15時に開催。お花見弁当や桜のデザート(アイスクリームやシフォンケーキ)の販売、手作り小物・雑貨販売、フリーマーケット、野外コンサート、フラダンス等、盛りだくさんのイベントを開催する。雨天中止。

問合せ ふらんす屋(山武市椎崎1321─2)
TEL 0475・80・7887
(毎週月曜日・第2・4火曜日定休、洋食ダイニング11~15時、17時30分~21時30分、ガーデンカフェ11~15時)

関連記事

今週の地域情報紙シティライフ

今週のシティライフ掲載記事

  1.  御宿町・日墨友好文化大使のヴァイオリニスト・黒沼ユリ子さん(81歳・御宿町在住)が、小学校時の図工の恩師であるイラストレーター・大西三朗さ…
  2. いつものにぎやかな音楽が聴こえると、それは移動販売車ピース号が来た合図。食品や日用品などを乗せて、週に1度、決まった場所へ決まった時間にやっ…
  3.  1945年8月15日の終戦の日、連合国軍機と交戦し墜落したとみられる零戦の機銃が、今年1月、大多喜町で発見された。遺族の依頼を受けた有志の…
  4.  日本の伝統文化として海外でも興味関心の高い折り紙。必ず一度は折ったことがあるだろう。一年の延期を経て今夏開催された東京オリンピックで、来日…
  5. メヒコの衝撃─メキシコ体験は日本の根底を揺さぶる 9月26日(日)まで 市原湖畔美術館  メキシコのスペインによる征服から500年、独立…
  6.  世の中、理不尽なことがたくさん起こりますが、それをどう捉えるかで人生の行く道が変わることがあります。目の前で起こっている理不尽なことは、今…
  7.  ボランティア団体『桜さんさん会』は今年4月23日、東京の憲政記念会館で開催された『第15回みどりの式典』で緑化推進運動功労者内閣総理大臣表…
  8. シティライフ編集室では、公式Instagramを開設しています。 千葉県内、市原、茂原、東金、長生、夷隅等、中房総エリアを中心に長年地域に…

ピックアップ記事

  1.  御宿町・日墨友好文化大使のヴァイオリニスト・黒沼ユリ子さん(81歳・御宿町在住)が、小学校時の図工の恩師であるイラストレーター・大西三朗さ…

おすすめ商品

  1. SG-507 ユネスコ世界遺産 フィルム 名入れカレンダー

    世界の自然や遺跡を厳選 – 豪華版・ユネスコ世界遺産シリーズ 1-2月/マチュ・ピチュの歴史保護区…
  2. TD-288 卓上L・大吉招福ごよみ・金運 名入れカレンダー

    金運の黄色と金箔「金運上昇八卦鏡」のW効果!驚異の金運力!金運上昇八卦鏡。 風水で八卦鏡とは、邪悪…
  3. SG-951 卓上 デスクスタンド文字(SB-324)名入れカレンダー

    【人気商品】卓上名入れカレンダーの超ヒット商品! 高級感が漂うシンプルデザイン。重量感のある厚紙を…
  4. SB-103 金澤翔子作品集 名入れカレンダー

    気鋭の書家、金澤翔子さんによる書下ろし作品集。 先天性の障がいを持って生まれた少女が書と出会い、才…

スタッフブログ

ページ上部へ戻る