市原の特産物『梨』で生み出された工芸品をご覧あれ

 7月31日(日)まで市原市更級にあるギャラリー和更堂で開催されていた『第2回梨肌焼展』。市内在住の陶芸家、升川正美さん(72)が市原の伝統ある果物『梨』の木灰を釉薬として焼いた様々な作品がギャラリーに並べられた。「木灰は市内の農家さんから頂いています。梨の釉薬は意外と垂れやすくて扱うのは難しいんですが、枝木の有効活用として市原のPRになれば嬉しいです」と升川さん。
 梨肌焼の名付け親であるギャラリー代表の相川浩さんは、「梨のように表面が少しざらっとしているのでこう名付けました。決して実用的な陶器に縛られず、独創性に溢れた升川さんの作品にとても惹かれています」と大絶賛だ。写真ではないかと目を疑うほどのフクロウや、木彫りの額縁に入っていると勘違いしそうなほど色鮮やかな東海道五十三次の画。
 カップや器など一般的な陶器に留まらない作風は、升川さんの30年の陶芸生活で独自に磨かれた技だ。「もともと画を描きたかったんですよ。画家であり陶彫家の森掬生さんに師事後、1998年市内にBOSO花窯を築きました。人と違う物を作りたくて、陶器の彫刻にも力を入れています」という升川さんが、現在までに一番丹精込めた作品は高さ約70㎝に及ぶ陶器だ。大きな作品の中には捻り陶彫や多面体花器などがある。また、壺に浮きあがる見返り美人の画は、陶器の丸さを生かしたかのようにふっくらとした女性の艶やかさを伝えてくる。炎の芸術と呼ばれる陶芸は、緻密な作品になるほど完成まで数カ月かかることは当たり前。予想外の模様が現れることがあれば、失敗することもあった。だが、「窯を開けた瞬間が一番楽しい」という充実感を得るために、毎日工房に通っては試行錯誤を続けた。梨以外にも、ケヤキやイチジクなどの木灰を利用した釉薬を持っているが、土によって色合いは大きく変わってくる。「梨の灰は果物と同じ色が出ます。絵具や余計な釉薬を加えると本物の色を失ってしまいます。ただ、梨とイチジクを合わせても面白いかもしれない。工夫すればもっと色んなやり方があると思うので、永遠に課題ですね」と話す升川さん。現在は市原市工芸会会員として各種展覧会への出展に励み、工房では生徒の指導にあたっている。また、昨秋に上総更級公園で行われた『アートクラフトin市原』では、全国から約百店舗集ったクラフト作家たちと広場で作品を販売した。「これからは香炉のように小さいけれど手の込んだ作品を作っていけたら。そして陶芸仲間たちと一緒に、さらに梨肌焼を盛り上げていけたら嬉しいですね」と最後に展望を語った。教室や作品について詳細は問合せを。

問合せ 升川さん
TEL 080・6559・0780

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