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整備され蘇ったきれいな里山に集い地域力を育んでいきたい
- 2017/1/1
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SaToYaMaよくし隊
昨年12月初旬の日曜日。きれいに整備された里山のふもとから、子どもたちの歓声や大人たちの笑い声が響いていた。場所は姉ケ崎駅から約3キロ、緑園都市の手前、市原市不入斗、薬王寺近くにある『竹・いろりの里』。
ここは、荒廃した里山を整備し、昔の美しかった里山に蘇らせようと活動を行っている『SaToYaMaよくし隊』の活動拠点だ。県道から少し入った市街地に隣接する里山の下に広がる敷地には、囲炉裏や炭焼き窯のある『いろり・食事広場』や丸太椅子・テーブルが置かれた『セレモニー(お食事)広場』、手作りの遊具が設置された『さとやま遊園地』、ザリガニやメダカのいる『とんぼいけ』や『いきもの池』、ヘイケボタルが現れる『ほたるいけ』、無農薬で竹炭や米ぬか、枯れ草を混ぜ込み竹酢液で害虫忌避して野菜を育てる『実験農園』などがある。この農園で収穫した野菜は、入口横の無人販売所で売っている。そして、面積1万5千平方メートル(4550坪)最高標高50メートルの里山には、散策路と幾つもの広場が造られている。
同隊が毎年主催する最も大きなイベントが、この日行われていた『いも煮会(感謝祭)』。里山の地主さんや近隣住民、関係者、隊員の家族と、その友人や知人が参加している。市外県外から訪れる人もいて、年々、盛況を増し昨年で10回目となる。定員80名のところ、申込締切日までに120名もの申込があった。
午前中は希望者が『さとやま探検』へと遊歩道をウオーキング。一番標高の高い『こもれびひろば』で、ひと休みして集合写真を撮る。下って『ミニ棚田』が一望できる『やまびこひろば』へ。3月下旬から、菜の花と棚田の風景、更にこの先にある大俵1本桜も楽しめる、知る人ぞ知るビュースポットだ。
そのあとは、お待ちかねの昼食。目の前で調理された本日のメニュー『かまど炊きごはん・山形風芋煮・竹炭焼きのヤキトリ・手作り漬け物と大根葉煮付け・サトイモのステーキ』を竹の器に盛り付け食べる。野菜と肉がたっぷり入った芋煮に「こんな贅沢な芋煮、食べたことない」と感激する親子や、熱々の焼きたてサトイモのステーキを「美味しい!」と頬張る子どもたちを見て、隊員の持田智恵子さんは「去年は煮ていたけれど、今年は蒸したものを鉄板にバターを引いて焼き、出来上がり寸前に醤油を垂らしました。もっと焼く技術を向上させて、ここの名物にしたい」と瞳を輝かせる。伐採したばかりの青竹で作った器や杯は瑞々しい緑色で、爽やかな竹の香りがする。
みんな、笑顔で里のご馳走に舌鼓を打ち、初対面の人たちも和やかな雰囲気のなか談笑していた。来場していた大俵1本桜とその周辺の美化・整備に務めるグループの代表である谷垣敬次郎さんの紹介も行われ「私の願いは1本桜のある所も、こちらのような憩いの場にすることです」と話した。
食後は、『さとやま遊園地』で遊んだり、セレモニー広場で尺八、アコーディオン、ハーモニカ演奏を聴いたり地元の和太鼓グループの手ほどきを受けて和太鼓体験をしたり、向かいにある薬王寺の境内で昔懐かしい竹馬や竹の輪投げをして楽しむ姿が見られた。笑顔で無心になって遊ぶ子どもたちを眺め、「こんなに身体を動かして遊ぶことなんて滅多にない」と驚く母親や「竹や木材の遊具は温もりがあっていいですね。手作りというのもいい。各自が自分流に楽しめるものばかり」と嬉しそうな父親もいた。年齢差のある子どもたちが一緒に遊ぶことは滅多にない今、ここでは幼稚園児から小学校中学年の子どもたちが同じ場所で遊び年下の子どもを気遣い、面倒をみてあげる子どももいて微笑ましかった。
午後、解散の時間を迎えると、同隊の鈴木幹夫隊長が「とりたてて宣伝はしていないが、今年もこんなに大勢の人たちが集まってくれました。私たちの願いは、今後も里山を中心に地域の皆が結束し、良い地域にしていくこと。そして、跡を継いでくれる若い人が隊員になってくれること。もちろん、里山に関心のある方なら中高年の方でも大歓迎。朝夕、この辺りをウオーキングしている元気なシニアの方にも、是非、気軽に立ち寄ってもらいたい。好きな時に、好きなことをすればいい。ゆる?い集まりです(笑)。里山の散策路を歩いたり作業するのも健康にいいですよ。私たちの活動予定はフェイスブックにのせているし、入口にある看板にも書いています。毎日、誰かしら来ているので、立ち入り禁止の看板が出てない時は、いつでも見学自由です。次回のビッグイベントは4月中旬から下旬に開催する竹の子パーティ。遊びに来てくださいね」と挨拶をして、芋煮会は幕を閉じた。
『SaToYaMaよくし隊』の発足は2007年4月。前身は、その2年前に『市原ネイチャークラブ』の一部門として活動を開始。平成17年度『いきいき市原ふるさとまちづくり』に里山整備事業提案し採用された。同年、炭焼きのための伏せ焼き窯が完成し、ドラム缶窯、ドラム缶より小さいペール缶窯、囲炉裏が完成。同隊が発足した年には、千葉環境再生基金活動助成金交付が決定。2009年にはピザ焼き窯も完成。市原ロータリークラブ地域社会貢献基金から補助金交付が決定。2010年、地元の有秋東小学校の6年生の環境学習で竹林の遊歩道完成した。里山に点在する幾つもの広場の名前は同小の生徒が名付けた。以降、毎年6月から11月、同校の5年生と6年生に里山体験の授業を行っている。2012年、セレモニー広場の奥にブイやロープのブランコ、竹の滑り台、丸竹シーソー等が設置され、翌年、杉林にジャングルジムなどが造営された第二里山遊園地が完成した。
里山整備と間伐材の有効利用をと、伐採した竹を使って細工や竹酢液等を作ることが活動のメインだが、その合間を縫って白鳥小学校での出前炭焼き教室や有秋・姉崎公民館主催事業『親子里山体験』に協力したり、正月飾りの出前講座も行っている。他にも、京葉高校の生徒たちと竹の間伐と倒木片付け後に、囲炉裏を囲んで焼きそばとサンマの串焼きの昼食を共にしたり、桜台夏祭りや青葉台ふれあいサロンに出店する等々、地道に地域との交流や親睦を図る取り組みを続けている。
更に2年連続で、千葉大の留学生と里山体験を通じ交流を図ったり、『きみかめ山のフェスティバル』(千葉県立君津亀山少年自然の家主催)や『木更津あかり祭 夜灯』(勝手に木更津応援団)に参加し、竹細工の展示と体験販売や竹灯りの演出サポートをするなど市外にも活動の場を広げている。もちろん、隊員同士の親睦を深めるため「夏の暑い時期は里山整備ができないので、鴨川へ出かけ、海岸で拾い集めた漂着テングサでトコロテンを作った」トコロテン作り教室や本格的ピザ窯を使ってのピザパーティなど楽しい催しも。
鈴木隊長は、「ゆくゆくは、この里山を落葉樹と竹の混在する森に戻していきたい。多種多様な植物や昆虫、動物などがいる里山に。そうなれば、もっと子どもたちが里山に親しみを持ってくれる。そして現在、会員は30代から80代までの30名いるが、実際に動くのは、その半分くらい。会の活動を維持することと後継者の養成が今後の課題。新しい活動家を発掘することが最大の課題です。私は長い目で見て、20年30年のスパンで繰り返しやっていくことが大事だと考えています。里山体験した子どもがシニアになって、ここに戻ってくるといいですね。また、里山を含めた環境に関心が高くなった社会の流れとリンクして、里山活動団体の数が増えたらいい。ひとつの竹林に、ひとつの団体をと。それが3人でも4人でもいいと思う。その手助けとなるよう、ここで体験や活用をしてもらえたら」と話す。
里山整備の資金に充てるため、伐採した竹の有効利用として作る商品は、竹とんぼ、靴べら、壁掛け一輪挿しなど。特に人気があるのは、ミニ門松と表札。市原市のエコフェアで販売している。同隊のシンボルマークのような存在である囲炉裏を前に、鈴木隊長は「ここに来れば誰かいる。みんな強制されてや義務ではなく、自主的にやって来ます。囲炉裏を囲んで世間話などしてストレス解消になるという人もいるし、自分が持ってる知識や技術を活かす作業を見つけ生き甲斐となった人もいます」と語る。生き甲斐探しに、ゆったりした時間が流れる、人の手が入り美しくなった里山を訪ねてみては。
問合せ SaToYaMaよくし隊・鈴木さん
TEL 0436・62・4121