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お互いが心を開いて考えると、みんなが幸せになる
- 2017/1/27
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国際武道大学教授 松井 完太郎さん
勝浦市在住の松井完太郎さん(53)は、国際武道大学の体育学部長。昨年、2020年の東京オリンピックの『サーフィン』競技を外房の海へ招致する活動に尽力した。2015年にIOC総会でサーフィンが正式競技に決定され、千葉の海が有力候補の1つになった。外房全体で招致するという公的な動きが報道される一方で、各自治体の招致活動も活発化した。
「当初、私が住む勝浦市も活動しないのかな、ぐらいに考えていました。しかし、サーファーと話していて、「外房」が「湘南」にも匹敵するブランドになるチャンスで、それこそがオリンピックのレガシー(遺産)だと気がついたんです」と話す松井さんのポリシーは、「即、行動する」こと。すぐに『外房の海へオリンピックのレガシーを 事務局』を立ち上げた。ホームページや招致ビデオを日英版で作成し、外房地域にある各自治体や県庁への発信も即座に実行した。
「大切なのは『外房全体』で価値を高め、外房を湘南に匹敵するブランドとして後世の人達に遺すこと。行政区分に関係なくレガシー(遺産)をシェアできれば、それは今後何十年も外房地域全体を豊かにするはずです」と語る松井さん。『湘南』もいくつもの自治体をまたがる地域。『湘南』全体がブランドとして高い価値を共有している。
オリンピックにより、『外房』全体がブランドとして、広く長く人々の記憶に残る機会となるかもしれない。「オリンピックの会場が志田下ポイントに決まったのだから、外房全体でそれを支えることが大切です。正直なところ、短期的に開催場所に経済的な利益がでるとは考えにくいです。でも、長期的に考えると外房全体の価値を上げるチャンス。志田下ポイントがある一宮町だけの責任としてはいけないと思います」と松井さんは続ける。
そんな彼を、「行動力があって、みんなを引っ張ってくれますね」と評するのは、勝浦市でサーフショップを営む高梨三千尋さん。『外房の海へオリンピックのレガシーを事務局』事務局長を務め、かつて松井さんの授業も受けた。「自らが犠牲になっても、周囲のことを考えてくれます。先生はちょっぴり変わっているけど、他の教授がする授業と違って、昔からユニークでしたね」といい、笑顔を見せる。
松井さんは現在、大学で空手道部の部長を務め、障がい者武道の研究も進めている。もともと武道は戦場で戦う技術である武術を起源としているもの。戦場ではケガで身体機能の一部を失っても戦い続けられるように、様々な状況での技を切実に探求していた。その意味で武道は様々な障がいに開かれた体系を持っているのだとか。「障がい者武道と言うと、障がい者のために健常者がケアしてあげる、というイメージがあるかもしれませんが、私は障がい者を受け入れることが武道のためになると考えています。武道が自らの起源を考え、技や稽古方法をも再考する機会になるからです」と語る松井さんは、学生たちと一緒に10年以上毎年カンボジアへのスポーツ支援活動も行っている。
「途上国は恵まれないからケアするという考え方では手を抜くことになります。『無いものを授けるのだから』という甘えからです。違います。私達はカンボジアからチャンスをもらっているのです。学生達の活動のために現地の学校は授業時間をつぶして受け入れ、学生達にキャリアを積む機会を提供してくれるのです。だからベストを尽くさないといけない。学生達は何度もリハーサルをして半年かけて準備するからこそ、最高のキャリアを受け取るのです」。このような活動が認められて、今年2月には、日本国政府がIOC総会で世界に約束した「Sport for Tomorrow」活動の一環として、松井さんが北欧各地で障がい者武道講習会を開くことになっている。
また現在、大きなサーフボードに立ち、オールを使って水面を漕ぐ『スタンドアップバトル・サーフィン』にも夢中。外房に広がる海を前に、まるで少年が青春を謳歌するかのような清々しさが、その横顔にあった。
問合せ 松井さん
TEL 090・2240・5394