ホソウミニナとウミニナ繁栄と絶滅

 ホソウミニナ(写真左側5個体)は、長細い円すい形をした巻貝で長さは約3~4㎝。殻は厚く、黒褐色や灰色で、白い帯やカスリ状など模様が多彩です。全国に分布し、干潟や磯場などの砂地や泥地に生息。千葉県レッドデータブックではDランク一般保護生物に指定されています。
 一方、ホソウミニナと同じ仲間のウミニナ(写真右側2個体)は、形、色合、生息場所・地域など、ほとんどホソウミニナと同じですが、より丸みがあり、滑層という部分が大きいのが特徴です。千葉県レッドデータブックではAランク最重要保護生物に指定されています。
 ホソウミニナは市内では、国道16号線そばの運河や養老川、前川の河口の一部に生息、その数は安定しているようです。写真のように干潟一面にびっしりと多く生息する場所もあれば、僅かしかいない場所もあります。しかし、ウミニナは市内では、ホソウミニナより生息場所が限られ、生息数はとても少なく、希少な存在となっています。
 ホソウミニナとウミニナの生息数の違いは、成育過程にあります。ホソウミニナは卵から稚貝として生まれ、一生、親と同じ場所に生息します。このため、エサとなる海草類や藻類が豊富にあるなど、生息しやすい環境であれば、局所的に足の踏み場もない状況になります。一方、ウミニナは孵化後にプランクトンとして海流に乗って浮遊、遠くまで生息域を分散できますが、その反面、たどり着く干潟環境がないと生息できません。このため、埋立てにより干潟環境が僅かしかない東京湾では、絶滅の危機に瀕しています。
 種の保存を広域的に行うためのウミニナの成育過程は、戦略性はありますが、大きく改変された自然環境においては通用しなくなったのでしょう。非常に残念な思いです。
(ナチュラリストネット/時田良洋)

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