神社に新風を吹き込み地域と人の心を明るく照らす

東金市松之郷八坂神社宮司 中嶋 祐子さん

 「中学生のとき、名前の祐は神様が助けてくれるという意味だと知りました。こういう道に入ると決まっていたのかなと思います」と東金市松之郷八坂神社の宮司中嶋祐子さん(29)は柔らかいがしっかりした口調で話す。小学校6年生のときに家の事情で母方の実家である中世から続く神社を祖父から継ぐことに決まった。国学院大学で神職の資格を取り卒業。さいたま市の調神社での3年間の修行を経て、平成26年、地元に戻った。
 しかし、1年後、頼りにしていた祖父が83歳で亡くなったのを機に中嶋さんは東金、成東、九十九里、大網にある36の本兼務神社を継ぎ、千葉県で最年少の女性宮司となった。「私が戻り、祖父は嬉しそうにしていたそうです。教わっておきたいことがたくさんありました」。宮司の日常は多忙。「寝ても覚めても神社。寂れていく神社界をなんとかしたいと思いはじめていたところでした」
 かつて八坂神社は天王様とよばれ、県外からも参拝者があるほど栄えていた。神社を崇敬する人たちが集まる天王講も50講あり、お祭りがあると学校が休みになったそうだ。「神社が栄えている土地は地域も栄えています。再び賑わいを取り戻し、地元を元気にしたいと思いました」
 伝統と格式を重んじる神社で新たな試みを実現するため、過去の参拝者数、神社の収入などをデータで示して周囲を説得。同じ地域にある東金青年の家、東金市公平地区を『日本で最も美しい村連合』に加盟させる会『美しい村公平』、東金商業高校、千葉学芸高校、東金東中美術部、東金東小学校の児童生徒、地元住民の協力を得て、今年7月6日、夏祭例大祭の宵宮で竹灯籠を飾り、第一歩を踏み出した。イベント準備の過程で、世界的に活躍する切り絵作家の井上瑞穂さんに出会い、小学生には自分のルーツを辿れる家紋の切り絵灯籠を作ってもらうことができた。「皆さまのお陰で困っていたら神様が助けて下さっているように動いていきました」
 境内にある、木花咲耶姫を祀る子安神社は桜の花、海の守り神の厳島神社は海をイメージした色で竹を塗った。「七夕なので境内全体を天の川に見立てました」。郷土史上の人物や神道に関する切り絵も展示し、英語の説明文もつけた。「周りの方に喜んでもらい、こんなに人が集まるのを見たのは久しぶりと言われました」と嬉しそうに語る。地元中学生とともに神楽舞も奉納した。
 「春は八鶴湖畔の夜桜、夏は松之郷八坂神社の竹灯籠と言われる東金市の風物詩にしたいです」。さらに友好都市である安曇野市のイベント『紙竹燈』との共催、地域の里山美化や竹のバイオマス燃料化など様々なアイデアを温めている。「私は思い付き人間。何かが降ってくるようにいい出会いがありました」と笑う。「郷土愛を教育目標に掲げる東中では今後、積極的に関わってくれたり、木彫専門の美術の先生が飾り方を提案して下さったりする予定なので心強いです」
 動物好き。落ち着いて見えるが、飼っている青いマメルリハインコを見る目は無邪気。「マメルリハにおみくじを引かせたり、一緒に神社を英語で紹介したりして、海外にも発信したいです」。ホームページも作成中。華蔵姫にゆかりのある字名の家之子と山武市姫島にある八幡神社を「山ユリでいっぱいに」、「千葉県産の材木でモダンな神棚を作りたい」とやりたいことは尽きない。
 中嶋さんは機会があるたびに神楽舞も奉納している。「重力を感じさせないゆっくりとした踊り。神に捧げるので心が大切です」。八坂神社、東金日吉神社、大網宮谷八幡神社で学生や一般女性に舞を教えている。「礼儀作法、神事や神話などの豆知識も一緒に勉強しています。いつか雅楽も取り入れたい」
 「罪穢れを嫌い、誠と正直を重んじる神道は、宗教の括りではなく、日本人に代々受け継がれてきた伝統文化。日本人のあるべき姿を伝え、心の支えになるものです。宮司の名を背負うのは重荷ですが、やると決めた道なので、勉強して、神社界、地域の人たちに一生懸命貢献したいです」と謙虚に熱い気持ちを語る。
 来年1月3日、大網白里市の宮谷八幡神社で10時と14時に神楽を奉納する。

問合せ 八坂神社
TEL 0475・52・3797

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