過酷な越冬!?テングチョウ

 早春の日差しが降り注ぐ穏やかな日、野山に出かけると、オレンジ色のチョウを見かけることがあります。体長は2~3センチ。羽をたたんで止まるため枯葉と同化し見つけるのが困難ですが、太陽の光をいっぱいに浴びるために羽を広げると、褐色の草原にオレンジ色の紋が対比して見つけやすくなります。顔をよく見ると鼻のように口先が伸びています。テングチョウです。
 名前の由来は、「テング」のように、顔の先が尖っているからと言われています。鼻のように見えるのは、パルピと呼ばれる下唇ひげの部分。他のチョウにもパルピは見られるそうですが、テングチョウがとりわけ発達しているようです。ユニークな顔つきは日本の他のチョウには見られないため、他のチョウとの識別点になります。
 この時期のテングチョウの多くの個体に羽の損傷が見られます。春先なのに羽がボロボロなのは不思議かもしれませんが、実はテングチョウは、厳しい冬を成虫のまま越冬するのです。冬の寒さに耐え様々な試練を乗り越えてきた証です。だからこそ、ポカポカの穏やかな日になると、ボロボロの羽にも係わらずに嬉しそうに飛び回るのかもしれません。俳句では『凍チョウ(いてちょう)』という季語があり、厳しい冬の間じっと体を縮め、春を待つ意味で使われるようです。越冬するチョウを季語として扱う日本の文化に、改めて感心します。
 山地から平地の雑木林の周辺に生息し、エノキを食草とします。基本的には年一回の発生で、初夏に成虫が羽化し、成虫のまま夏秋冬を越して春に産卵するたくましいチョウです。散歩で出会ったら、「お疲れ様」と声をかけてあげましょう。

(ナチュラリストネット/岡嘉弘)

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