中高生が作る文化財マップ

 有秋公民館とボランティア団体『鎌倉街道を歩く会』(代表小関勇次さん)の連携により、昨年4月から同館主催事業『有秋散歩地図 文化財マップをつくろう』(全6回)が行われた。市バスと徒歩でのフィールドワークは、5月の鎌倉街道上総路と国分寺周辺、6月の久留里街道西往還と房総往還などを巡る2回。参加した中高生26名は古道や文化財を自分の目と足で調査しベニヤ板6枚分の地図を制作した。
 3月3日最終回は中高生がスクリーンと地図を使い古道や文化財について発表した。志学館中等部1年生大澤承真さん、吉野蒼斗さん、小沢航太郎さんは「多くの建物や古墳について知った」と上総国分寺、尼寺周辺の文化財について説明した。
 姉崎高校の日本史研究を選択する3年生が発表したのは2つの古道。西井美羽さんと星野絵里奈さんは中世から近世にかけて利用された鎌倉街道上総路を紹介した。文化庁指定『歴史の道百選』の道の部分は市原市立野付近から袖ケ浦市下新田までの約13㎞。道沿いに道標、寺社が多く、直線道路や切通しが特徴。源頼朝が閲兵したと伝わる御所覧塚のほか、市原市立野字鎌倉街道、鎌倉街道橋など今も残る地名にも触れた。
 江戸から久留里城に通じる道を総称した久留里街道について話したのは近藤あかねさんと中田裕菜さん。この街道は農地を避け、山上や山裾を通している。主に3本のルートがあり、東往還は八幡宿から牛久を通り養老渓谷方面から、西往還は姉崎、椎津城付近から久留里に向かう。五井から今富、立野を通る中往還は、久留里藩の参勤交代路として利用され、殿様道とも呼ばれた。
 五井駅西口徒歩5分の所に江戸時代の文化4年(1807)の道標がある。江戸から館山方面に下る房総往還から中往還に入る最初の起点で『江戸道』、『久留里道』などと刻まれている。市原インター近くの道標は馬頭観音。立野へ続く引田の示道標は鎌倉街道と交差し、姉崎や牛久、高倉観音への方向も示す。刑場伝説のある、西往還と鎌倉街道枝道(至久保田)が交わる桜台と天羽田の境付近には、開発による移動の可能性もあるが地蔵・庚申塚などの石仏群がある。
 高校生は「建物や道路開発などで消失や移動した道標が多かった。歴史を紐解く大切な足掛かりが破壊されるのは残念。多くの人に知ってもらいたい」と訴えた。姉崎高校では一昨年から授業で二つの街道について学び、手作りの道標やパンフレットを設置してきた。今回の講座を経て今年1月、近藤さんと中田さんも久留里街道西往還の道標を作成して桜台4丁目付近に設置した。
 地図は同館に寄贈され、4月8日まで展示された。村越秀和館長から参加生徒全員に感謝状が渡された。埋蔵文化財調査センターの職員も「市民の財産となる新たな文化財を掘り起こしてくれた」と今後の活動にも期待をしていた。

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