地域から愛されるチームへ

VONDS市原ソフトボールクラブ
渡辺 和久 監督

 市民クラブVONDS市原は、地域の総合スポーツクラブとして、トップチームであるFCの他に社会人クラブを3チーム擁している。男子サッカーのVert、女子サッカーのレディース、そして女子ソフトボールクラブ。総じて各チームの設立年数はまだ若いが、中でもソフトボールは昨年4月に始動したばかり。この新チームを率いているのが、木更津総合高校女子ソフトボール部で長年監督として貢献した、渡辺和久監督(55)だ。
 全国優勝17回、インターハイ優勝3回、国体優勝3回など、木更津総合の強さは全国に知られる。日本代表U19の監督としても、2008年にアジア選手権大会優勝、2010年に世界選手権大会準優勝を成した。かつての教え子たちは幾人もが全日本代表として活躍し、この夏、市原ほか県内で開催される世界女子ソフトボール選手権大会にも出場する。「VONDS市原ソフトボールクラブは、市原を代表するチームとして、最終的に最高峰の日本女子リーグ1部加盟と、その優勝を目指しています。現段階では、リーグ2部加盟が認められる、7月末の全日本クラブ女子ソフトボール大会でのベスト4が、第一目標。集まった選手たちのレベルは高く、試合ごとに伸びていますので、非常に楽しみです」と渡辺監督は話す。
 2年目の新しいチームに優秀な選手が揃う。なかなか難しいことだが、これも渡辺監督の指導力が鍵となった。木更津総合と全国のライバル校の卒業生たちが「監督の指導を受けられるなら」と入団してくれたという。「教員をやめて、まさかこういうことが起きるとは思っていなかった。非常に有り難かったですね」
 監督がソフトボールと出会ったのは高校のとき。出身の栃木で国体があり、中学野球で優秀な選手を強化指定校に集め、男子ソフトボールチームが作られることになった。渡辺監督は子供の頃から甲子園とプロに憧れた野球少年。ソフトボールに誘われて非常に迷ったが、地元のためならと決心した。結果は国体優勝、U19日本代表にも選出、そして世界大会優勝を飾る。「日本スポーツ賞まで受賞し、素晴らしい達成感や喜びをソフトボールからもらった。選手をやめるときに、その魅力や楽しさを伝えたいと中学教員として指導者の道を選び、その後、木更津総合からオファーを受けたときも、生涯ソフトボール中心でやりたいと決めました」。ソフトボールのルールは概ね野球と同じ。しかし全ての距離が約3分の2と短く、投手と打者の間も、ベース間もコンパクト。そのため走塁、ボール捌き、返球など、攻守のプレーが非常にスピーディーだ。また、日本代表の投手の弾は体感170キロ、VONDSの選手も約150キロで投げ、その迫力も魅力。「市原で世界大会も開催され、東京オリンピックもあります。ぜひこの機会にソフトボールの面白さを知って頂きたいですね」。

人間としての成長が大切

 チームの寮は牛久にあり、選手たちが住んでいるが、ここも監督とは縁が深い。1988年から1995年、南総中の教諭だった監督は、ソフトボール部で県大会に6回優勝。当然、学区の牛久には教え子もその保護者もいて、顔見知りも断然多い。「おかげで南総地域の方たちから、とても熱心に応援していただいて。有志の応援団ができたり、普段から練習場や寮へ選手たちに差し入れをくださったり。まさか市原に戻って20年前の縁が繋がるとは思ってもみませんでした」
 こうした周囲からの支援を、監督は「当たり前と思ってはいけない」と言う。「チームや選手が、普段から周囲に感謝と気遣いを持ち、一生懸命に仕事と練習をしなければ、職場や地域から応援していただけないでしょう。勝つことも大事ですが、選手の人間性の成長が何より大切です」。相手に思いやりがない、自分勝手な言動をするなどの選手は試合に出さない。中学高校と、子どもたちを指導してきた監督は、今もその基本を変えていない。「今は人生100年。しかし競技する期間は10年から20年と短い。しっかり人生を歩むには、道徳心や礼儀、公共ルールを守るなど、社会性がまず身についていること。それに、選手として能力が伸びるのも、やはり人として基本ができている子のほうが早い。今回、鹿児島で行われる全日本大会への遠征費用も、多くの方が快く支援してくださったのですが、これも選手たちがいつも職場で頑張り、地域の方と交流しているからだと思います」。街で選手たちと定期的にゴミ拾いをするのも、少しでも地域に恩返しを、という思いからだ。
 大事なのは、地域から愛されるチームになること。そして、その温かい応援の恩返しに、結果を出していくこと。「選手も私も練習が楽しくて仕方がない状態。チームとして非常にいい形です。試合には難しい局面が必ずありますが、そこを突破して、リーグ登録へのチャンスを掴みたいですね」と、監督は力強く話した。

問合せ VONDS市原
TEL 0436・75・2015

関連記事

今週の地域情報紙シティライフ

今週のシティライフ掲載記事

  1.  今やサーファーの聖地となった長生郡一宮町には、上総国一ノ宮の『玉前神社』(たまさきじんじゃ)が長い歴史と共に鎮座する。ご祭神は神武天皇の…
  2. ◆一席 若者の人生曲げる闇バイト 大網白里市 渡辺光恵 ・世渡りは適度に自説曲げ伸ばす 東金市 伴里美 …
  3. 【写真】スパリゾートハワイアンズ・ウォーターパーク ●千葉県立美術館開館50周年記念特別展「浅井忠、あちこちに行く~むすばれる人、つながる時…
  4. 【写真】五井小の歴史をたどるスライドショーの冒頭、紹介する子どもたち  昨年と今年は、創立150周年を迎える小学校が多数ある。1872年の…
  5.  冬の使者と呼ばれるハクチョウ。シベリアなどから北海道を経由し、冬鳥として日本へ広く渡って来る。近年、地球温暖化の影響で、繁殖期と越冬期が暖…
  6. 【写真】坂下忠弘  来春3月2日(日)、市原市市民会館・小ホールで開催される『いちはら春の祭典コンサート2025』。市原市…
  7. 【写真】千葉県立中央博物館・御巫さん  11月24日(日)まで、千葉県立中央博物館で開催されている『二口善雄 植物画展』。…
  8. 【写真】川口千里(左)、エリック・ミヤシロ  日本を代表するトランペット奏者、エリック・ミヤシロを迎え、いま最も注目を集め…
  9. 【写真】うたと語り「今、この町でこの歌を」  毎年、夏に開催される『市原平和フェスティバル』。平和への祈りとメッセージが込…
  10.  今回は「映画音楽」特集の第1回。良い映画では必ず、音楽・主題歌が感動を与えてくれます。テレビCMでも使われる名曲もあり、何処かで聞いたこと…

ピックアップ記事

  1.  今やサーファーの聖地となった長生郡一宮町には、上総国一ノ宮の『玉前神社』(たまさきじんじゃ)が長い歴史と共に鎮座する。ご祭神は神武天皇の…

スタッフブログ

ページ上部へ戻る