相手の心に寄り添った絵手紙を描きたい

 「これが春菊の花?!」とビックリ!野菜の花は美しいものが多いが、こんなに愛らしい花は、なかなかないのでは。そんな花に負けないくらい輝くような笑顔で来場者に接していたのが本吉はつさん(70)。今年5月初旬、市内在住の本吉さんの絵手紙展が内田未来楽校で開かれた。『アートいちはら2018春』の会場になっており、カラフルで夢のような世界を演出したパラソルアートの展示が行われていた。ほっこりとしたぬくもりある絵手紙とのコラボは、どちらも手づくり感満載で、見るひとの気持ちを癒してくれるようだった。
 本吉さんが絵手紙を描き始めたのは早期退職した57歳のとき。「長年、観光会社で経理の仕事をしていたのだけど、実母の介護のために退職しました。でも、介護に明け暮れる生活に参ってしまい、なにか夢中になれるもの、介護生活のリフレッシュになる没頭できる趣味のようなものを持ちたいと思い、参加したのが『市原・童謡を歌う会』と絵手紙の講座でした」と、当時を振り返る。たまたま在職中に目にした絵手紙作品。いつか自分も描いてみたいと思っていたそうだ。以来、コツコツと独学で描き続けていった。
 「実は、21年前に父を亡くし、その後、立て続けに妹と夫を亡くしました。それで人生観や人に対する感謝の気持ちなど様々な想いが交錯し、描く意欲が高まったのです。あの頃は自律神経失調症や睡眠障害で心身のバランスを崩しましたが、描こうという意思を持ったことで、いい方向に考えられるようになったのだと思います」
 絵手紙に気持ちを込めて表現してみたら、送った相手がとても喜んでくれた。相手のことを思い浮かべ書き綴る文章に、送った相手から「自分のことを、こんなふうに見てくれていたのか」と喜ばれることが嬉しいという。

 書をたしなんでいたので、自分なりの絵手紙をとアレンジにも趣向を凝らした。「家族、親族、友人、お世話になった皆に感謝の心を表現しています。そうして14年間」、描き溜めた作品を発表したいと考えていたら、内田未来楽校の小出事務局長さんが、声をかけてくれ、初めての個展開催となりました」と本吉さん。
 今回の作品展示に際し、書き下ろしだけでなく、過去に送った人に、個展が終わったら返すと伝え、絵手紙を送ってもらった。来場した男性は、ある絵手紙を見て、自分はこの送り主を知っているが、よく彼のことを理解していると感心することしきりだった。

関連記事

今週の地域情報紙シティライフ


今週のシティライフ掲載記事

  1.  今年は小湊鐵道開業100周年。これを記念し、アートによる地域づくりの拠点である市原湖畔美術館は、小湊鐵道とコラボプロジェクトを進行中。小…
  2.  成田山公園で毎年行われる冬のイベント「成田の梅まつり」。会場は成田山新勝寺大本堂の奥、16万5000平方メートルもの広大な公園。四季折々…
  3. 【写真】パキスタン・カラチの整備途中の農場で、働く青年たちと田中さん(前列右端)      36年間の市議会議員のあと、パキス…
  4.     ◆一席 記念日を遅れて祝い根にもたれ  一宮町 黒猫胡桃     ・老プランあまく見積り火の車  茂原市 道譯賢…
  5. 【写真】講演する家田さん      昨年12月、市原市市民会館で開催された『令和6年度市原市人権・男女共同参画フォーラム』。男…
  6. 【写真】はにわ博物館展示室の姫塚埴輪        昨年8月、千葉県殿塚古墳・姫塚古墳出土埴輪(総数48点うち殿塚古墳30点、…
  7. 【写真】第1回ドリームコンサートにて。2部では会場とステージが一体に &…
  8.  明けましておめでとうございます。2005年5月に「こでまりの夢」のコラムが始まって今年で20年になります。今回は第1回で掲載しました『か…
  9. 【写真】西本さん。大谷家具ギャラリー工芸館にて、展示作品と      大分県別府市在住の竹細工職人・西本有(たもつ)さんは、市…
  10. シティライフ編集室では、公式Instagramを開設しています。 千葉県内、市原、茂原、東金、長生、夷隅等、中房総エリアを中心に長年地域に…

ピックアップ記事

  1. 【写真】パキスタン・カラチの整備途中の農場で、働く青年たちと田中さん(前列右端)      36年間の市議会議員のあと、パキス…

スタッフブログ

ページ上部へ戻る