【市原市】企画・防災特集 第1回 行政・地域・市民のつながりで協力態勢を

 異常気象や地震などで、全国各地に災害が発生している近年。特に2011年3月11日によってもたらされた東日本大震災は、未だに鮮明に記憶している人も多いだろう。市原市でも震災時の臨海部工場の爆発や、度々起こる豪雨での浸水・冠水、土砂崩れなど、身近な場所でも被害が出ている。
 いざという時、私たちの暮らしを守っていくにはどんな方法が必要なのか、どんな情報を知っていれば役立つか。シティライフでは、読者の皆さんへ定期的に防災の情報お伝えしていきたいと思う。第1回である今回は、市原市の取り組みとして、現在行われていることを取材した。
 市原市は、東日本大震災の経験を踏まえ、防災に対する態勢を強化している。市民に一番分かりやすく形になったのは、2018年2月から供用を開始した新しい防災庁舎だろう。「旧庁舎の耐震面での危険性という問題を、市で急ぎ整備する案件と判断したのは、やはり3・11が大きかったですね。私たち職員も、あの地震で初めて体験したことがいくらでもあります。庁舎内の市民の避難誘導、職員の全員待避。五井地区全域(3万6367世帯・8万5024人)への避難勧告。部署に関係なく、人員応援で交代で庁舎に泊まり込むなど、それまで本当にやったことがなかった。災害発生時、どうすれば迅速に対処できるのかなど、職員の意識も変わったと思います」と話すのは、危機管理課課長の佐久間重充さん。市町村の行政機能が壊滅的打撃を受けると、その後の救助や避難、物資の配布など、いざという時の生命線である公助が絶たれてしまうことにもなりかねない。県内各市町村でも同様の問題を重視し、浦安、習志野、市川市では新庁舎を建設、防災面強化を打ち出しており、千葉市もこれから整備される予定だ。
 市原市の防災庁舎は、危機管理課と災害対策本部用フロアが向かい合っているのが特徴のひとつ。緊急時に即対応するフローも確立されており、どの職員が入室しても確認できる項目図が大きく壁面に貼られ、備品もすぐ使えるよう配置済み。「台風や大雪など気象情報から早く警戒態勢を敷き、災害が起こる前に準備します。もし職員が帰宅し、急な天候変化で登庁できない危険性があるなら、最初から帰宅せず庁舎に泊まります」と、課長補佐の大関一彦さんも話す。実際、取材した翌日には関東圏で大雪予報が出ていたため、担当職員は当日帰宅しない予定になっていた。
 大関さんは、東日本大震災で実際に被災現場に立った職員のひとり。当時は財政課所属で、地震が治まった後、避難所運営のために臨海地域へと向かっていたが、市役所通りのJR陸橋の上に来たとき、突然、爆風を受けた。「コンビナートのタンク火災です。車中にいても顔が熱くなるほど、もの凄い熱風でした。市役所に連絡しようにも、電話もメールもつながらず、とにかく若葉小に急行しました」。避難所の体育館には、すでに地域住民や工場の人たちなどが集まっていたが、校舎の窓ガラスが爆風で破損するなど、避難所として安全な状況ではなかった。急遽、国分寺台へ移送することとなり、公用車をなんとか数台集めたが、とうてい間に合わず、小湊バスもチャーター。国分寺台西小、西中、東小体育館へと、無事に移送した。大関さんは「今、思い出そうとしても細かいことは記憶がないんです。何しろすべて初めてのことで、無我夢中だったのだと思います」と語る。
 市が昨年度から新たに始めた防災の取り組みには、地区防災計画がある。県内初の試みで、公助・共助・自助を連携し、防災の実効性を高めることが狙いだ。「これまでの防災計画は行政だけの話でした。しかし大規模災害になると、行政だけでは対応しきれない。特に市原は、県下で面積が一番広く、コンビナート、住宅街、山間部、養老渓谷と、地域によって特性が違います。災害も工場火災、養老川の氾濫による農地や住宅地の浸水、山間の土砂災害と、リスクも違う。平常時や被災直後、各地域でどんなことをすればいいのか、住民の皆さんに計画してもらい、それを市の防災計画にも組み入れるという施策です」と佐久間さん。昨年2月から計6回、市民参加の防災100人会議を実施、今年1月には防災計画を立てるモデル地区を3地区決定した。 各地区は約1年かけて市と協力しながら計画を策定する。昨年10月には避難所の見直しもし、立地により災害別用途に変えた。水害が起きそうな場所は豪雨時には避難所にはならず、それを誰でも分かるように看板の設置もするという。佐久間さんは「これからの防災は、行政・地域・市民、すべてつながっていることが重要となります。大規模地震の危険性がある今、確実な協力態勢を作ることで、防災活動の推進にしたいと考えています」と話した。

※次回は4月、地震が起きたときの防災情報をまとめます。

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