周囲に教わった相撲の技 自分で描いた相撲道 朝日山親方(元関脇 琴錦)【市原市】

10月1日は市原市の『市民の日』。恵まれた自然と歴史を有する市原への愛と誇りを培い、市原市の未来を考える日として市制施行40周年を記念して、平成15年に制定された。市民の日を記念し、市原市協賛で市内の各種団体は様々な事業を開催。ちはら台コミュニティセンターでは『朝日山親方(元関脇 琴錦)講演会』が行われた。約1時間半の講演では、親方が相撲部屋に入るまでの過程や現役時代、親方の仕事や相撲部屋の経営についてなど幅広い話が披露され、参加者たちは興味深そうに聞き入っていた。

相撲道を突き進む

群馬県高崎市出身の朝日山親方は、中学校を卒業するとすぐに佐渡ヶ岳部屋に入門した。「出身地の高崎市は城下町で、サラリーマンの父親に厳しく育てられました。当時はボクシングやプロレスの全盛期。勉強ができなくてもスポーツで強くなれという教育方針で、小さい頃から柔道を習っていました」と、話す親方。小学校6年生の時に、地元の祭りで初めて相撲に出会ったのは何かの運命だったのだろうか。「飛び入り参加だったにも関わらず決勝まで行ったんです。周囲の勧めで相撲を始めて、中学校では柔道部に所属していたんですが相撲も並行してやり続けた」とか。大会では県の代表になり、関東や全国大会に駒を進めるのが当然のような流れ。その実績は、ロサンゼルスオリンピックで金メダルを獲得した山下泰裕さんや6つの相撲部屋からスカウトが来るほど。高校進学が決まっていたものの、朝日山親方は父親から言われた「柔道じゃ飯は食えない。相撲をやれ」という言葉を受け、相撲の道へ進むことを決意したのだった。
入門後の生活は中学時代と一変。想像をはるかに超える厳しさだった。「朝4時に顔面を殴られて起こされたのは、入門の翌日のことでした。厳しい稽古で足の裏の皮がむけて血だらけになっても、誰も止めろとは言ってくれない。昼寝の時間はなく、昼食はちゃんこのスープやポン酢を米にかけて13杯ほどお腹に流し込む。夜は先輩のタオルを手で洗濯して、翌朝までに乾かさなければいけない」というほどの、目まぐるしさだ。それでも、稽古場から逃げることなく続けられたのは、「実家には帰れないという想いと、一緒に入門した6名の同期の存在があったからだった」と、振り返る。だが、それだけではない。身長が177センチと小さめだった身体の肩幅を広げようと、夜中に屋上に上がっては一人ダンベルを持って稽古を続ける芯の強さを持っていたからだろう。
1984年に琴松澤の四股名で初土俵を踏んでから、2000年に引退するまでの16年間で朝日山親方は二度の優勝を成し遂げた。自らの強さを、「押し相撲」だとハッキリ。身長2メートル前後の曙や貴ノ浪と戦っても、一度もまわしの上手をとられたことがないのは、その戦略があったからこそ。どんなにぶつかり稽古が辛くても、「先輩たちは自分を強くしようとして声をかけてくれているんだ!」と、ポジティブに受け止めた。そして、「千代の富士からは稽古の厳しさ。初代若乃花からは立ち合いの構えの姿勢、逆鉾からは体格に合わせて肘を張れるよう肩幅を広げることなどを教えてもらいました」と3人の先輩から学んだことを告げ、「自分だけではこれだけ上にあがれなかった。若貴ブームで対決も多かった貴乃花や若乃花など、周囲の仲間たちに本当に恵まれました」と、感慨深げだった。

しんどさが楽しい

引退した力士が協会に残って相撲の運営に携わるためには、年寄名跡を取得する必要がある。名跡は勝手に創設することはできず、相撲協会が管理するもので、朝日山親方は16年間に渡り色んな部屋の名跡を名乗ることになった。「テレビの解説に誘われた時期もありましたし、いつ首なってもおかしくなかったと今では思います。それでも、千代の富士関に言われた『大関昇進のようにまた諦めるのか』という厳しい一言で奮いたった」という親方。2016年6月に鎌ケ谷市に朝日山部屋を持ち、今では10人の弟子と共に部屋を盛り上げようと奮闘中だ。「自身の体調や部屋の経営、悩みはある。相撲エリートは集められないが、私はどれだけやんちゃな子どもでも更生させる自信があります」と、笑いながら胸を張る。弟子の一人は近くのコンビニでアルバイトをしていた175キロの男の子というから驚きだ。「今は地域密着の相撲部屋を心がけています。良い時も悪い時も、動く心情に従い頑張ってきた。これからは強い力士を育てるため、肉体改造に力を入れていきます。みなさん、ふらっとしている子どもがいたらスカウトに行くのでお知らせください」と、親方は強い目標と共にユーモアを語ることも忘れず、会場は笑いで溢れていた。

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