ふるさとビジター館 自然探訪~良い匂いを持つジャコウアゲハ~

【写真右】ウマノスズクサに産卵するジャコウアゲハ

 

 黒色のアゲハチョウには、いくつか種類があるが、一般的には「クロアゲハ」と一括りにされてしまうことが多い。その種類は、尾状突起(翅の後部にある細長い突起)の有無や翅の白斑や赤班などで見分けることができる。今回紹介するジャコウアゲハは、腹部に赤色の帯状に連なった斑紋がある。この模様があるのは、本州に生息しているアゲハの仲間ではジャコウアゲハだけなので、お腹を見れば容易に見分けがつく。

 ところで、ジャコウアゲハの名前は、オスの成虫が腹部から麝香(ジャコウ)のような匂いを発生させることに由来していると言われる。ジャコウとは、雄のジャコウジカの腹部にある香嚢(ジャコウ腺)から得られる分泌物を乾燥した香料、生薬の一種で、甘いバラの香り、みずみずしい草の香りと表現されるようである。ジャコウアゲハのオスが発するこの匂いはメスを引き寄せるという役目をもっている。さらに、この匂いを好むのはチョウだけではないらしい。匂い成分・フェニルアセトアルデヒドが含まれる香水や香料は、世の女性たちも引き付けて止まないようだ。

 ジャコウアゲハは、毒を持つチョウでもある。幼虫が食べるウマノスズクサ類の葉にはアルカロイド系の毒が含まれ、体内に蓄積されたこの毒は、チョウに羽化した後も一生を通して体内に残る。そのため、ジャコウアゲハを食べた捕食者は中毒をおこし、捕食したものをほとんど吐き出してしまう。ジャコウアゲハを捕食して中毒を経験した捕食者は、ジャコウアゲハを捕食しなくなると言われる。

 良い匂いを発しながら、自ら毒となり天敵を追い払うという何とも不思議なジャコウアゲハ。皆さんも、このチョウの匂いを嗅いでみたいと思いませんか?
(ナチュラリストネット/岡嘉弘)

 

◇ナチュラリストネット/自然を愛する仲間の集まりです。豊かな自然環境をいつまでも永く残したいと活動しています。 Tel.080・5183・9684(野坂)

関連記事

今週の地域情報紙シティライフ


今週のシティライフ掲載記事

  1.  市原市は市制施行60周年を記念し、『エンジン01(ゼロワン)in市原』を2024年1月26日(金)~28日(日)に開催する。先月8月25日…
  2.  マザー牧場(富津市)では、ひと足早く秋先取りの絶景が登場。まきばエリア 『花の大斜面・東』にて、 2年目となる『コキア』が9月上旬より紅葉…
  3.  心ない行動や言葉が、人を追い詰め事件になるケースも多い昨今。この本『慈雨』の筆者・大木太枝(たえ)さんも、20数年前、愛する家族が他人の中…
  4.  9月30日(土)・10月1日(日)の2日間、上総更級公園や上総大路などで、『上総いちはら国府祭り』が4年ぶりに開催される(主催:上総いちは…
  5.  絵本作家の五味太郎さんが書いた本に『じょうぶな頭とかしこい体になるために』という本があります。「何をしたいか自分でもよくわからないんだ」と…
  6.  今回から前後編で、世界に名を轟かせた黒澤明監督に関するお話です。黒澤明:1910年(明治43年)3月23日生~1998年(平成10年)9月…
  7.  牛久石名坂1号墳跡は、市原市のほぼ中央に位置し、国道が縦横に走る養老川中域の標高37メートルの河岸段丘上にあります。周囲には大小の古墳が9…
  8.  8月21日から23日の3日間、野田市にある江崎グリコ株式会社の工場見学施設『グリコピアCHIBA』にて、小学生とその家族を対象としたワーク…
  9. シティライフ編集室では、公式Instagramを開設しています。 千葉県内、市原、茂原、東金、長生、夷隅等、中房総エリアを中心に長年地域に…

ピックアップ記事

  1.  9月30日(土)・10月1日(日)の2日間、上総更級公園や上総大路などで、『上総いちはら国府祭り』が4年ぶりに開催される(主催:上総いちは…

スタッフブログ

ページ上部へ戻る