懐かしのシネマ~黒澤明監督5作品~

 今年は黒澤明監督生誕100年記念。前回に続き、48年前に行った『黒澤明監督5作品48時間フエスティバル』について、上映作品を時系列に紹介します。黒澤明:1910(明治43年)3月23日生~1998(平成10年)9月6日・88歳没。上映5作品はモノクロですが、1作品だけ1分ほどカラーになります。読者の皆様はご存じでしょうか?

 1番目「七人の侍」。出演:志村喬・三船敏郎・宮口精二・木村功・加東大介ほか。1954(昭和29年)に公開され、ヴェネツィア映画祭銀獅子賞に輝く。欧米から注目され、米国でユル・ブルンナー主演「荒野の七人」が公開され話題になり、「世界のクロサワ」の名を馳せた。七人の侍は今、草葉の陰で眠っています。2番目は「用心棒」。出演:三船敏郎・仲代達矢・東野英治郎・沢村いさ雄・山田五十鈴ほか。1961(昭和36年)公開。ヴェネツィア映画祭主演男優賞・三船敏郎。三船敏郎の敵役・仲代達矢は、監督の強い要請で着流しでピストルを持ちニヒルな浪人を演じた。たて続けに三船敏郎と準主役で共演、押しも押されぬ大スターとなる。

 3番目は「椿三十郎」。原作:山本周五郎、出演:三船敏郎・仲代達矢・小林桂樹・加山雄三・田中邦衛ほか。1962(昭和37年)公開。仲代達矢は大目付の懐刀・室戸半兵衛役。言動に貫禄があり、三船敏郎と甲乙つけがたく、ラストシーンの対決は一瞬で決着が付くが、凄まじい血吹雪で、これ以上のものは撮れないと監督が判断、撮り直さずに決めたという逸話が残る。4番目は、この興行の中で唯一の現代劇「天国と地獄」。1963(昭和38年)公開。原作はエド・マクベイン(キングの身代金)、出演:三船敏郎・仲代達矢・香川京子・三橋達也・黒澤組で初出演の山崎務(誘拐犯)。黒澤組のベテラン俳優がこぞって出演し、緻密な演出も類を見ない。例えば、特急第2コダマの洗面所の窓が7㎝開く、犯人が現金の入ったカバンを燃やすと10秒ほど桃色(カラー)の煙が立ち上るなど。権藤家の運転手・青木役の佐田豊の悲壮感あふれる演技もぜひ注目を。

 ラストは「赤ひげ」。1965(昭和40年)公開。原作:山本周五郎、出演:三船敏郎・加山雄三・香川京子・二木てるみ。三船敏郎は、第26回ヴェネツィア国際映画祭で男優賞、サン・ジョルジョ賞を受賞。涙を誘ったのが、12歳のおとよ(二木てるみ)。知り合った7歳の男の子・長次(頭師佳孝)の一家が無理心中をはかり、助かる見込みがないと知ったおとよは、井戸に名を呼べば呼び戻せるという言い伝えを信じ、必死で井戸の中に向かって何度も「チョウボー」と長次の名を呼ぶシーン。

 あらためて5作品を3日間かけて見ましたが、何十年経っても素晴らしいの一言です。

 

◇黛葉(まゆずみ・よう)
茂原市在住。1942年生。元映画配給会社宣伝プロデューサー。現役時代は年200本以上を鑑賞、現在、放送された洋邦画の録画DVDは1100枚以上にのぼる。

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