ヒエログリフで書いたオンリーワンのマイネーム

 3月14日(土)、成東文化会館のぎくプラザでは山武市世界遺産研究会主催で『古代エジプト文字・ヒエログリフを学ぼう』講演会が開かれた。共催に山武市成東中央公民館、講師はエジプト壁画とヒエログリフの研究者である村治笙子さん。約50名の受講者の中には実際にエジプトを旅行したことがある人もちらほら。「エジプトと聞いて、どんなことを連想しますか」という村治さんの声に、「ツタンカーメン!」、「クレオパトラ」、「ミイラ!」など次々に答えが飛ぶ。
 古代エジプト文字であるヒエログリフは、現在遺跡や発掘品の中に見られる象形文字。アルファベットだけでなく色々な文字があり、神々に読んでもらうための神聖なものとされた。「エジプトといえばピラミッド。ラクダが砂漠を歩いている姿を想像するかもしれませんが、実は農業大国なんです。確かに国の90%は砂漠ですが、過去には草原も存在してキリンやライオンもいたとされます。ヒエログリフの中には動物もたくさんいるんですよ」と村治さんは説明する。
 前面のスクリーンに写されるエジプトの資料映像に目をこらし、受講者たちは真剣な顔。さらに、ヒエログリフには母音がないこと、弱母音『あ』一つの言葉を表す文字も1つではなく『え』を表す文字が使われなかったこと、単語の意味を知らせるための工夫として単語の後に性別や物を表わす決定詞を使用したことなどを学んだ。
 そして、受講者たちは『ヒエログリフ50音字典』と『ヒエログリフのアルファベット表』を参考に、各々が自身の名前を紙に書き出していく。同じ音を表す文字が複数あることで、たとえ同じ名前であっても各々が異なる形にすることは可能。これぞ、オンリーワンのヒエログリフネームなのだ。『フクロウ』、『ワシ』、『ウズラ』などが名前に含まれている人は鳥を描く難易度の高さに、「『あ』が何回も出てくると大変だったよ。でも、可愛いだろう?」と初めて書くヒエログリフに嬉しそうだ。また、別の受講者も「今度、自分の名前としてどこかで使いたいから、さっと書けるように家に帰って練習しないと」と話す。書いた名前が間違えていないか村治さんに確認してもらおうと、長い列ができる場面も。
 「文字数は千以上もありますが、絵なので覚えやすいと思いますよ。古代エジプト人が気を付けたのはバランスです。鳥は頭の後ろがとがっていることや嘴がとがっていることなど特徴を掴めば書きやすいです」と村治さんは続ける。講座では、他にも『ロゼッタ・ストーン』を解読したシャンポリオンについての解説があるなど、遠いエジプトにはなかなか行けない日本人の受講者にとっては貴重な時間になったのではないだろうか。

関連記事

今週の地域情報紙シティライフ

今週のシティライフ掲載記事

  1. 【写真】第1展示室  人々の暮らしを様々な面で支えている人工衛星。ロケットで打ち上げられた人工衛星は地球の周回軌道に投入さ…
  2. 【写真】教室の講師と子どもたち  JR浜野駅前と五井駅前でダンススタジオを経営する堀切徳彦さんは、ダンス仲間にはNALUの…
  3.  市原市不入の市原湖畔美術館にて、企画展『レイクサイドスペシフィック!─夏休みの美術館観察』が7月20日(土)に開幕する。同館は1995年竣…
  4. 【写真】長沼結子さん(中央)と信啓さん(右) 『ちょうなん西小カフェ』は、長生郡長南町の100年以上続いた小学校の廃校をリ…
  5.  沢沿いを歩いていたら、枯れ木にイヌセンボンタケがびっしりと出ていました。傘の大きさは1センチほどの小さなキノコです。イヌと名の付くものは人…
  6. 『道の駅グリーンファーム館山』は、館山市が掲げる地域振興策『食のまちづくり』の拠点施設として今年2月にオープン。温暖な気候と豊かな自然に恵…
  7.  睦沢町在住の風景写真家・清野彰さん写真展『自然の彩り&アートの世界』が、7月16日(火)~31日(水)、つるまい美術館(市原市鶴舞)にて開…
  8.  子育て中の悩みは尽きないものですが、漠然と考えている悩みでも、種類別にしてみると頭の整理ができて、少し楽になるかもしれません。まずは、悩み…
  9. シティライフ編集室では、公式Instagramを開設しています。 千葉県内、市原、茂原、東金、長生、夷隅等、中房総エリアを中心に長年地域に…

ピックアップ記事

  1. 【写真】第1展示室  人々の暮らしを様々な面で支えている人工衛星。ロケットで打ち上げられた人工衛星は地球の周回軌道に投入さ…

スタッフブログ

ページ上部へ戻る