人見知りであまのじゃく、だけど人間が好き

小孫 哲太郎 さん (陶芸家)

「掻き落し」といった素焼き前の陶器の下地を先の尖ったもので彫り、その上に色をつける技法で作品を手がけるのは、いすみ市に住む小孫哲太郎さん(41)。独特の色使いと、描かれる模様のユニークさで、作品を一度見ただけで作者を特定できるほどのインパクトがある。 印象に残るのは作品だけでなく、小孫さんの容貌も関係しているかもしれない。というのも小孫さんの髪型は月代。つまりちょんまげを結える髪型なのだ。
「目立つからとかではなく、ただ単に百年前の人の髪型にしてみようかという感じです。ただ展示会では、作品を目立たせるのが優先なので、手拭いをかぶっています」と小孫さん。
 小孫さんの作品は見えない場所、たとえば茶碗の底などに丁寧に絵が施されている。
「地面があるからこそ上物が見える。地面があるから自分が大地に立っている。一つの作品に太陽と月と大地があり、それにカラスや亀、てんとう虫など、自分が見てきたものが入り込む。想像で絵を描くのではなく、全て自分の世界を描いています」
 小孫さんの生まれは東京。中学生の頃に船橋市に引越し、デザイン科のある高校でアナログ的な手法を使って美術全般を学んだ。その後、沖縄の県立芸術大学に入学。最初から陶芸に興味があったわけではなかったが、なんとなく陶芸専攻を選んだ。そこそこ成果もあがり大学院に残ることも考えたが、経済的な事情から地元の窯元に就職。師匠にあたる人を見て、自然に対する考え方、生き方が変わった。そして居心地の良さに一生、沖縄に暮らすことも考えたという。しかし一度は自分の作品で勝負したいと、千葉に戻り、いすみ市の山の中に開窯。家も自分で作ってしまった。最初は知り合いから器の注文もあり、生活していくには問題は無かったが、頼まれた物を作っているだけでは終点が見えないと思うようになってきた。「たまたま掻き落しで作った茶碗に味噌汁を入れ、お祖母ちゃんに出したところ、凄く喜ばれたことから、この技法でやっていこうと決めました」。そして2005年、ビックサイトで行われる大きなイベントに作品を出展、現在に至っている。
 展示会場で作品を見た人がクスッと笑うことがある。皿や茶碗に混じって、何に使うか分からないような形の器もある。共通するのは、作品個々に描かれている小孫哲太郎の世界観。そこに人は思わず引き込まれ、微笑むのかもしれない。「平和を考え作っているなんて言うと大げさですが、今、世界でつらい状況の人はたくさんいます。僕の作品を見た人の顔が、一瞬ほぐれるのなら僕は幸せです」
 年3回、東京や大阪、札幌などの有名百貨店で個展を開催する。仲間との企画展でパリに出品したこともある。順調に陶芸家としてキャリアを積んでいるように見えるが、生活していくための手段として作陶を選んだだけで、生涯の仕事として続けていくかどうかは分からない。根底に人を喜ばせたいとの願望があり、病気で苦しむ患者さんたちを楽しませるホスピタルクラウンのような仕事にも興味があると話す。どんな時にも人を喜ばせたいと思う気持ちと遊び心が、次々と作品を生み出す原動力となっているのかもしれない。展示会等の活動案内は「チョンマゲのブログ」に随時掲載。

問合せ 小孫哲太郎さん
www.ameblo.jp/chiba-riyo/

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