人生は見方によってこんなにも幸せになる 陶芸家ファミリーが自然の中で生き抜く

鈴木 芳徳さん 智子さん 文さん

 茂原市下太田在住の陶芸家、鈴木ファミリー。両親の鈴木芳徳さん(71)と智子さん(59)、娘の文(あや)さん(31)は自宅を兼ねた工房で、多くの作品に囲まれて暮らしている。「かつては静岡県三島市に住み、10年ほど箱根の山の中に工房を持っていました。茂原に越して来たのは妻の母の生家が近かったことが一因ですが、なにより自宅と工房がセットにできる魅力にひかれました」と芳徳さん。
 平成3年に千葉に移り住んだ一家、他にも茂原市を選んだ理由はたくさんあった。近所は今よりもっと静かで、一日に車が3台通ればいい方だった。牛を飼っている家からは、鳴き声も聞こえて穏やかな気持ちになれる。ぼう、ぼうと鳴く牛の声から名付けた『らんぼう窯』の名は静岡にいた頃と変わらない。さらに、学生時代から縄文土器に興味のあった芳徳さんは、自宅近くの川で縄文土器を発見したことにも心が躍った。「この近くに貝塚があるんです。ここに縄文人が住んでいたんだから、なんか良いなと思えたんです」と思い出すように目を細めて笑みを見せた。
 芳徳さんと智子さんが出会ったのは、静岡の窯でお互いが弟子入りをした時。結婚をして生まれた文さんは、物心がつく前から土に触れる生活をしていた。「トラック一杯に窯で使うさつまいもの蔓を積んでいる時、妻が産気づいたんです。そのまま産院に直行です」と笑う芳徳さんに、智子さんがポットからお茶を注ぐ。そのポットは智子さんが成形をし、芳徳さんが絵付けをしたもの。そして、注いだ湯呑は文さんが作った作品だ。家族がそれぞれ手を入れてできた湯呑セットが、テーブルの上で当たり前のように並ぶ。
 「普段は、意外にも陶芸のことを家族で話さないんですよ。各自でずっと好きなものを作っていますし。時計や置物、商品だとお皿やカップですかね。よく、24時間ずっと一緒で疲れないのって聞かれますが、空気みたいに心地良い存在です」と智子さん。すかさず、文さんが「ダメ出しをすることはありますけどね。もっと可愛く作ったらって」と笑いを取る。
 東京芸術大学を卒業後は工房で陶器の作品を生み出す他、文さんは陶芸以外にも力を入れている。最近はプラスチックに絵を描いて焼く『プラバン』やTシャツに図柄をプリントした『シルクスクリーン』を制作し、いかに可愛くできるか独自のアイディアで研究中だ。鞄や帽子に付けられるアクセサリーのプラバンは、ワインやネコ、日本酒やフクロウの柄で女子心をくすぐる一品だ。
 毎日、3人はそれぞれ色んな場所で活動する。芳徳さんは絵付けを担当することも多く、図案を考えるために外へ出て草花や動物をスケッチする。智子さんが工房で土をこねれば、文さんは大学時代に専攻していたという鋳金作業のため2階で火を扱う。「陶芸は時間がかかるんです。合間に色んなことができますよ。素材があれば、何でも楽しめる!」と終始笑顔を見せる文さんに、今まで反抗期はなかったとか。
 そして文さんが「何があってもどうにかなる。貧乏の知恵はたくさんあります」と話すと、「静岡にいた時は、窯場に電気も引いていなかったんです。夜は星がとても綺麗で、月が出なくても明るかったんですよ」と芳徳さんが続けるように、鈴木ファミリーは常に自然と共に生きてきた。「これからは木を灰にしたり、地域の物を使って作品をつくりたいです。また、陶芸教室をやっていますが、一生懸命やった子の作品は努力が正直に出ます。そんな姿を見ると、初心に返りますね。技術や伝統はすでに出尽くしているので、まずは作品に正面から向き合うことが大事かな」と智子さんは展望を語る。
 しんどいな、と思う時があっても「周りの人たちにとても助けられている。これからは家族で恩返しをしていきたい」と声を揃える3人。「でも、自由もいいけれど、生きて行くことも考えようよ!」と突っ込む文さんに、両親も大笑い。きっと誰もが、結末を知らずに人生の選択をしていく。ただ、こんなにも家族一緒に笑顔を浮かべられるなら、これからどんな困難が起きても乗り越えていけるに違いないだろう。作品の購入、体験教室など詳細は問合せを。

問合せ 鈴木さん
TEL 0475・34・5393

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