イノシシ対策へ新たな光

長柄町が旋風を巻き起こす! (写真上大塚さん)

 今夏、長生郡長柄町では画期的なイノシシ捕獲装置が発明されていた。町では2014年度に210頭、15年度に352頭が捕獲されているが、イノシシの繁殖時期は年に2回、子どもが事故などで失われた場合には、母親の出産回数が自然と増すことも確認されており、近年個体数は増加の一途をたどっている。
 町長の清田勝利さんは、「零細農家が多く、細々と丹精込めて野菜を作っても、収穫の時期に被害にあってしまうんです。一番の課題はイノシシの個体数を減らすことですね。捕獲したイノシシをジビエ料理として扱えれば、町おこしにも成りえるでしょう」と話す。そこで、地元で農業を営む神崎好功さんと房総発明研究会会長の大塚誠一さんが二人三脚で開発したのが『匂いで誘引、特殊光センサーで検知して捕まえる装置』。
 「従来の方法である括り罠は俊敏なイノシシでは避けることが可能です。また、檻式では装置の中にワイヤーなどをつけて檻が閉まるようにしても学習能力が高いので、跨ぐようになります。1年間かけてイノシシの習性を根底まで学び、装置の改良に生かしました」と、神崎さんは装置の威力に自信をみせた。
 コスト削減のために選択した部品は『乾電池』と『自転車の空気入れ』というシンプルな作りで、それは今後どんな農家が装置を取り入れても扱いやすいようにと想定してのことでもある。動作源の乾電池は単3を8本で1カ月、空気入れは1回の蓄積で10回使用可能。実験段階ではすでに2頭の捕獲に成功している。
 「検知センサーを、イノシシには見えない色にしたり、木の葉などで誤作動しないように複数にしたりと工夫しました。そもそも対策として、匂わない野菜を作ったり、囲いを作ったりと予防策に出がちですが、私達は彼らの習性を逆利用しているんです」と大塚さん。ジャガイモやトウモロコシ、長いもなどを使用して実験した結果、イノシシの好物はサツマイモが一番だと発覚した。
 檻の前に『香り発生器』と題したミニ焼き芋器の設置を考案したのも、従来の来るまで待つ方法から積極的な捕獲へ乗り出した形となる。センサーの位置を変えればキョンやアライグマ、ハクビシンなどの有害鳥獣へも活用できるので、大きな期待が寄せられる。神崎さんは「現在、町内には約100個の檻が設置されていますが、実際に使用されているのは20個ほどです。残りにこのセンサーを付ければ、格段に捕獲数は上昇するでしょう」と意気込んだ。千葉県のど真ん中に位置する長柄町が、農業被害の実態に革命を巻き起こす日は、もうすぐそこまで来ているのかもしれない。同装置は年内には販売する予定。詳細は問合せを。

問合せ 神崎さん
TEL 090・1127・0100

関連記事

今週の地域情報紙シティライフ


今週のシティライフ掲載記事

  1. 【写真】撮影:関口 武  来月8日から13日、夢ホール(市原市更級)で『小湊鐵道を撮る仲間たち』展が開催される。この写真展…
  2.  市原市椎津の住宅街のなか、車1台分の細い道路沿いにある地域の公園『ららぱーく』。昨年11月、『都市の緑3賞(主催:公益財団法人都市緑化機構…
  3.  5月27日(土)、28日(日)、『白子ライオンズクラブ』主催の『白子ホタル観賞会』が長生郡白子町剃金の第3クリーンセンター公園にて開催され…
  4.  毎年大好評の松山バレエ団いすみ公演が、今年も開催されます。4回目となる今回は、同バレエ団創立75周年記念作品として、新演出を加えた『ジゼル…
  5.  地図やコンパスを使い、エリア内に多数設置されたポイントを多くまわって、点数を競う野外スポーツ・ロゲイニング。これに謎解きとミッション(地域…
  6.  白い花をたくさんつけた小枝が、道路の斜面に見られるころだ。突き出た枝に列のように並んでいたり、房のように咲いていたりする。下向きの花の重み…
  7.  市原を中心とした房総の地域歴史を調査・探求している房総古代道研究会は、令和5年4月、会誌『房総古代道研究(六)』(A4版78ページ)を発刊…
  8. 「人生100年時代、どうやったら幸福な終活の日々を送れるのか。そのひとつとして、ヨーロッパで人気の体験・滞在型農園の菜園版的な、交流できる…
  9. シティライフ編集室では、公式Instagramを開設しています。 千葉県内、市原、茂原、東金、長生、夷隅等、中房総エリアを中心に長年地域に…

ピックアップ記事

  1.  市原市椎津の住宅街のなか、車1台分の細い道路沿いにある地域の公園『ららぱーく』。昨年11月、『都市の緑3賞(主催:公益財団法人都市緑化機構…

スタッフブログ

ページ上部へ戻る