県研究発表会優勝 ハッチが遺した贈り物

 県立大網高等学校(校長 岩﨑章さん)生物工学科愛玩動物専攻3年生11人の研究、犬の車イスを作る『ハッチプロジェクト』が、千葉県学校農業クラブ連盟研究発表大会のヒューマンサービス部門で1位となった。同科はバイオテクノロジーや動物について学習する。そのなかの愛玩動物専攻は伴侶動物の命とのかかわりを学んでいる。生徒たちは千葉市緑区にある同校の中正農場で犬、ヤギやウサギの世話をし、学外では動物愛護活動団体と交流も行っている。
 「普段の活動で受賞し、メディアに取り上げられるのは意外だった」と不思議そうに話すのは副専攻長の3年生、中山茂遙さん。『ハッチプロジェクト』がスタートしたのは、昨春に生徒たちが世話をする犬のハッチが加齢でヘルニアになったのがきっかけ。徐々に下半身が動かなくなるのを「何とかしてあげたい」という自然な気持ちからだった。はじめは室内運動場の段差のある場所に網を張ったり、スノコを敷いて清潔にしたりと生活環境を整えた。しかし、ハッチは家畜を追う牧畜犬を祖先に持つ活発なウェルシュコーギーという犬種。思うように動けずストレスをため、物に噛みつくようになった。  昨年7月、病気の進行を防ぎ運動不足解消のため、獣医と相談し、ビニールプールに温水をため、リハビリを始めた。ハッチは順調にプールで歩けるようになったが、夏が終わり寒くなると、水に浸かるのが難しくなった。そこで考えたのが車イスだった。生徒たちは動きやすく、身の回りの物で安価にと話し合い、試行錯誤をはじめた。初作はキャスターをつけたプラスチック製の収納カゴの上に発泡スチロールを置いたが、歩けなかった。キャリーカートを台にした試作品は重く、排せつにも問題があった。
 車イス製作者に相談すると、なかには「犬それぞれに合わせ作っている。簡単にできると思わないでほしい」と厳しい言葉を返す人もいたが、軽くて加工しやすい「塩化ビニール管を」とのアドバイスをもらった。ところが、試作する間にもハッチは弱り、前足の筋力も低下していった。中山さんは焦りを感じつつも、「のめりこんで取り組む仲間に尊敬の気持ちを覚え、自分も頑張れた」と語る。5作目の完成は、すでに病気の発症から1年近く経っていた。
 ハッチが亡くなったのは5作目に乗り始めたばかりの今年5月。担当教諭の小高貴博さんは「これで元気になれると思っていた3年生のショックは大きかった。けれども、県大会で発表することを目標に努力し、ハッチの死を乗り越えた」と健闘を称える。
 ハッチは失ったが、今、車イスは千葉市の老犬介護施設で活用されている。中山さんらは自分たちが作った車イスで施設の犬が歩くのは「達成感があり、うれしい」と誇らしげに語った。

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