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作品から感じる音
- 2018/5/25
- シティライフ掲載記事, 外房版

表情の豊かさで臨場感を表現
とにかく子どもの頃から形あるものを作るのが好きだったと語るのは、大住泰史さん(75)。中学生の頃は図工クラブに入り、彫塑を作っていた。彫塑とは粘土で人の顔や像を作り、それを石膏に置き換えたりする造形物や、それから型を取り鋳物にした像のことを指す。
高校生になっても製作は続けていたが、社会人になり仕事の忙しさで中断してしまった。30才の半ば、知り合いに誘われ、再び制作を始めることにした。その後、定年を機に東京から御宿町に移り住んだのは15年前。午前中、畑仕事をし、午後の34時間を制作に当てている。大のクラシックファンの大住さんが作るのは、殆どがヴァイオリン、ピアノ、コントラバス、ハープ、チェロなど楽器を奏でる人の像。もちろん楽器も、その細部にまでこだわって作っている。
「まず首から上を作りますが、傾きを考え、顔の表情、特に目の方向に時間をかけます。その後、首から胴、腕は途中まで、足は足首まで、手の甲までを作ります。お尻や胸など見えない部分も精密に作り、楽器を持たせて衣装を着せます。そうすることで、人の骨格や体の動きがより実際的に表現できると思っています」。最後に指を作るが、楽器を奏でる形にするのが難しい。例えばヴァイオリンだと、弦を押さえる指や、楽器の大きさに合わせて腕の長さがぴったり合わなければ仕上がらない。細かい部分を無理に曲げると粘土の密度の違いで取れてしまうのだという。
また本体は空洞にし、焼く時にヒビが入ったり、破裂するのを防ぐ必要もあるそうだ。「こんな作品は他に見たことがないとよく言われます。モデルがいるわけではなく、東京に住んでいた時にたくさんのコンサートに行った経験を基に、イメージだけで形を作っています」
本体が完成したら、色が定着しやすいように素焼きする。彩色の方法は釉薬や化粧土、本焼きしても色が付けられる下絵の具を使う。肌の質感やドレスなど色の付け方が違うので繊細な作業が必要になってくる。大住さんの目標は、演奏している音楽を奏でているその時々の瞬間を形にし、できたものを見て音楽を感じられる作品を作ること。初めての展示会を御宿町内のギャラリーで開催したが、今後は東京など他の場所でも行いたいと考えている。
問合せ 大住泰史さん
TEL 0470・68・3118