すべての仕事は宿命だった

 10月28日(日)、茂原市と茂原市ハートフルフェスタ実行委員会の共催で『第11回茂原市ハートフルフェスタ(茂原市男女共同参画大会)』が行われ、元千葉県知事の堂本暁子さん(86)を招いて講演会が実施された。堂本さんはTBS記者・ディレクターとして報道番組の制作に携わり、その後、参議院議員として男女共同参画社会基本法、DV防止法、児童売春防止法など様々な立法、審議に携わった。 そして2001年から8年間千葉県知事を務めた堂本さんは、主にNPO政策や障害者政策までと幅広い内容を県民主体で県政運営を軸に活動した。「私はアメリカで生まれたのですが、第二次世界大戦の前に日本に帰国してから一度、別荘のあった長野県に疎開していました。しかし朝晩の寒さに耐えきれず、母方の祖父が住む茂原市に身を寄せた時期があります」という。同講演会では、『男女共同参画と我が人生』と題して、堂本さん本人の生い立ちや政界時代、そして茂原市の歴史を振り返った。
 茂原市では明治35年に茂原清和女学校が誕生、全国的にも早期的に女子教育へ力を入れた土地である。現在、世界男女平等ランキングで日本は114位。原因は政治家や企業のトップに女性が少なく、そして総理大臣になった女性がいないことが挙げられる。「義務教育を含めた学生時に男女格差を感じることはほぼありません。それが社会に出ると一気に格差が生まれます。社会的な意思決定の立場にいくことは困難だと、多くの女性が未だに感じているでしょう」と、堂本さんは提言する。
 堂本さんは記者時代に唯一、男女の格差を感じた経験があった。「私は南極大陸へ取材クルーとして同行することを希望したのですが、船は男しかいないから乗船させられないと拒否されました。5年前に個人的なクルージングで行って念願叶いましたが、大好きなペンギンに会えず、南極大陸の取材の女性1号にもなれず当時は残念でした」と、振り返った。今でこそ女性の社会進出自体は進んできているが、それも堂本さんたちのような女性の苦労や悔しさがあってこそ成り立った結果なのだろう。
 また、「現代の人間は急ぎ過ぎているように感じます。目先の利益だけを追求するか、大きな自然の摂理の中でありのまま生きることを認めるか。人間の真の豊かさを見極める時期にきているのではないでしょうか。」と警鐘を鳴らす。かつてはなかった冷蔵庫や洗濯機、電子レンジなどが当たり前の存在になってしまうと、いざ災害が起こった時には適応能力が極端に落ちる。加えて、人間が利便性を求めて電力を使用するほど、地球温暖化に拍車がかかる一因にもなるだろう。 「町を住み良くするためには、時代を先取りする必要があります。そして障がい者や子どもなど様々な視点から物事を捉えなければなりません。しかしみなさん、決して時代に振り回されず、地に足をつけて生きてください」と、堂本さんは聴講した約80名に向けて、強いメッセージを送った。

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