親しまれる紅葉の名所 400年続いた名家の跡地 大網白里市・十枝の森【大網白里市】

 広さ約1万5千平方メートルの十枝の森。敷地内には30種・数百本の広葉樹が大きく枝を広げ、例年11月の終わりから12月初旬にかけ見事に色づく。ここは九十九里平野を干ばつから救うため、両総用水を発案し実現にこぎつけた、故・十枝雄三(とえだゆうぞう)氏の屋敷跡の森だ。現在は大網白里市の所有で、管理はボランティア団体『十枝の森を守る会』が行っている。

樹齢400年以上の大木

クスノキと佐藤さん

 十枝の森は、大網白里市北吉田に400年以上続いた十枝家の敷地。初代が駿河から移住したころに植栽されたと思われるケヤキ、幹回り5メートル以上のクスノキ、明治初めに十代当主が京都から持ち帰ったイロハモミジの群生などで、今では小さな自然の森を作っている。守る会の事務局・佐藤秀男さんは、「高く大きな木が敷地の周囲に多いので、森全体が美しく色づくんですよ」と話す。
 十枝の森では、守る会により毎年春と秋、音楽祭や芋煮会などのイベントが開かれてきた。春は新緑、秋は紅葉を、多くの市民が楽しんできたが、今年はすべてのイベントが中止。昨年の台風で、樹齢400年以上の大木や、最後の当主・15代澄子さんが暮らした『帰山荘』そばにあった高木などが、根元から倒れたり、途中から無残に折れたりして大きな被害を被り、さらに今年のコロナウイルスの感染防止が追い打ちをかけた。倒木の除去など、ボランティアによって荒れた場所を片付けてきたが、1年以上経った今でも、すべて終わっていない。切り分けられたままの木や、積み上げられている薪などがいくつもある。「感染防止のため、今年の保全活動は皆が集まって一斉に、という形をとっていないんです。ですので被害跡の片付けもなかなか進んでいません。それでも、ここは市民の皆さんに親しまれている地域の紅葉の名所。九十九里地域の発展に私財をなげうって尽力した十枝家のためにも、できるだけ早く整えたいと思っています」と佐藤さんは言う。

用水事業に尽力した十枝家

例年の芋煮会

 14代当主・十枝雄三氏は、大網白里町の名誉町民第1号。昭和8年、当時の福岡村(現在の大網白里市内)村長となり、この年と翌9年に発生した大干ばつに直面、被害を受けた町村長の先頭になって国・県から救済を得た。生活水までも困窮する九十九里地域のため、利根川から水を引く両総用水事業を提案し、小中川や真亀・南白亀川の改修事業にも奔走する。昭和15年には無報酬の県会議員となり、またもや起きた大干ばつに、水害で悩む佐原出身の県議・坂本斉一氏とともに、香取から長生地域の51カ町村と結束して、とうとう引水事業に国会の承認を取り付けた。戦時中のため事業はいったん止まったが、戦後はさらに当時の東金町長・能勢剛氏と両総事業所長の瀬戸忠武氏とも協力。昭和25年、直接GHQと交渉し、アメリカの対日援助資金から、用水の建設費に5億円(現在では約12兆円)を出させることに成功した。
 この時、十枝氏は78歳。引水事業などのために家屋敷を担保に借財し、一度はすべて手放して、長屋門を改造し家族4人で住んでいたこともあった。次女の澄子さんが懸命に内職で借金を返済して土地を取り戻したあと、昭和24年に地元の村民たちから、今も残る『帰山荘』を寄贈された。「雄三氏は昭和27年に佐原での竣工式に参列したあと、昭和31年、事業の完成を見ることなく84歳の生涯を閉じています。森の入口にある雄三氏の碑は、用水事業の功労者として、翌年、時の総理大臣・鳩山一郎氏の揮毫で建立されたもの。私たちの故郷が実り豊かな田畑を得たのも、雄三氏が我を顧みず尽くしてくださったから。澄子さんは、雄三氏亡き後、母と兄も見送り、亡くなるまでひとりで帰山荘で過ごしたそうです」と佐藤さん。

薪にした倒木

 昭和63年、澄子さんは樹木保全を条件に大網白里町へ森と家屋を寄贈、管理人としてこの森に住み、平成23年に98歳で亡くなった。森を守る会は、澄子さんを慕い、森の保全に協力したいと平成15年頃に発足。雄三氏を尊敬しているという佐藤さんも、しよっちゅうこの森に来ては作業しているという。「澄子さんはこの森をとても愛し、家から庭や森を眺めるのが大好きだったそうです。守る会は、この森を雄三氏の偉業の遺産として、また、澄子さんが愛した癒しの場所として、大切にしています。ぜひ歴史ある森で美しい紅葉を堪能していただき、良ければ、私たちと一緒にこの森を残す活動を一緒にしていただきたいと思います」と語った。

●十枝の森
大網白里市北吉田178
問合せ:佐藤さん TEL.080・9809・5505
https://toedanomori.jimdofree.com

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