ふるさとビジター館 いちはら自然探訪 ツバキキンカクチャワンタケ

 3月の山を歩いていると赤いヤブツバキの花が目立ちます。虫のいない時期ですが、野鳥たちが蜜を目当てに次々と訪れています。椿の花は花びらと雄しべを合着させて、脇から盗蜜できない仕組みになっています。そのため花は丸ごと落ちて土に還っていきますが、そこでツバキキンカクチャワンタケ(椿菌核茶碗茸)の登場です。
 このキノコは花全体を分解し、晩秋に固い菌核(菌糸の塊)を作ります。そして翌年の3月になると落葉をかき分けて菌核から地上に柄が伸び、先端の茶碗から胞子を放出します。そこでまた椿の落ちた花に発生するというシナリオです。
 この茶碗をそっと掘ってみましょう。つながった球根のようなものが菌核で、椿の朽ち果てた組織が入っています。このキノコは落花する椿のために、菌核という形で地面の中でじっと出番を待っているのです。そもそも椿の花は枯葉などよりもかなりの栄養源、それを利用するのも実に賢い!
 公園の椿の下にも出ているのもよく見かけますので、ぜひ探してみてください。茶碗に触れると胞子が飛ぶのが見えますヨ。この世界の生き物たちの不思議な繋がりがきっと感じ取れることでしょう。
(ナチュラリストネット/加藤恵美子)

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