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「百人一首扇面作品展」で雅な体験を ~かな書道・いずみの会~【茂原市】
- 2021/6/17
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- 茂原
「書は人の生き方に通じます。山があり谷があり、ピークはどこ、四季の移ろいは、といつも言うんです」と穏やかな笑顔で語るのは、かな書道講師の野々山春泉(しゅんせん)さん。現在、茂原市鶴枝公民館のロビーに展示されているのは、扇形に切り取った料紙(仮名書き用に加工された和紙)に百人一首の散らし書きをした21作品。作成したのは「いずみの会」の会員9名。うっすらと模様の浮き出ているものや、色のぼかしのあるもの、細かい金銀の箔を散らしたものなど、それぞれが選んだ美しい料紙に、流れるような筆遣いである。
「普通の縦長の半懐紙に書くのとは違って、扇面作品は扇子の要にあたる部分に向かって書くので難しいんです。選んだ用紙によってもいろんな表情があります。墨の色、かすれ、行の揺れ、全部違いますからね。そして余白が大事」と野々山さん。美しい用紙と連綿(数文字をつなげて書く筆致)の筆遣い、余白に映える赤い落款(らっかん)印。すべてが相まって高い芸術性を感じさせる。草書や、百人一首に詳しくない人でも、目に飛び込んでくる絵画のような扇面作品から、雅な平安に思いを馳せることができるだろう。作品は昨年1年間かけて仕上げたもので、昨年秋の文化祭に出展する予定だったが、新型コロナの影響で中止となり、今回展示の運びとなった。
「いずみの会」は平成6年に公民館主催の講座として始まり、平成14年からは自主サークルになり今に至る歴史のある会。昨年度の扇面作品に続き、今年度は、短冊状の用紙に書いた百人一首を、折帖(山折り谷折りで畳んでいく装幀の台紙)に貼る作品作りに励んでいる。これまでの集大成とのこと。
ふだんの練習日には、野々山さんが「ここは字が揃っているから少しずらしましょう」「ここはバランス的に行間を広くしたいから…」などとメンバーの作品を添削し、朱を入れるのだが、一つの平仮名に数十通りもある変体仮名のどれを使うか、言われてすぐに理解できるほど会員のレベルは高い。「『道』とつくものは大変ですよ。書道でも華道でも。一歩ずつ学んで長い歴史があってここまできました。かなの美しい表現を目指して、みなさん、よく付いてきてくれました」と目を細める野々山さん。「書いていると落ち着くし、趣味があるっていいですよ」と高石きよ子さん。練習の後もわいわい和やかな雰囲気で、「コロナ禍で食事会もできなくなりましたけど、みな仲がいいんですよ」と会長の小林侊香さんは笑う。40代から80代まで幅広い会員がいるが、みな年齢より若々しい。伝統の書は、それぞれの人生に輝きを添えている。
・いずみの会
第2・4(水)10~12時 茂原市鶴枝公民館
問合せ:小林さん Tel.090・4713・8279