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ふるさとビジター館 自然探訪~房総半島を北上するキョン~

 小型のシカ科のキョンが房総半島で生息域を拡大している。キョンというと、昭和世代では漫画の「がきデカ」に登場する「八丈島のキョン」を思い浮かべる人もいるだろう。八丈島で自然に生息しているのかと思いきや、植物公園で飼育されているとのことだ。
 本来、キョンは中国南部や台湾に生息しており、日本には野生は存在しないはずなのである。それが、本州では千葉県にだけ野生として生息している。理由は、1980年代に勝浦市にあったレジャー施設で飼育されていた個体が、逃げ出したことによるとされる。房総半島は繁殖に適した環境だったのか徐々に増加し、千葉県行政当局の報告では現在、推定9万4000頭、分布域を北に広げているという。
 大きさは、中型犬ぐらいで、ニホンジカの小鹿サイズである。見た目は可愛らしいのだが、大きく不気味な「ギャー」とか「ギエー」という鳴き声で存在が容易にわかる。農作物の被害額が令和6年度で500万円を超え、特定外来生物に指定されている。県当局では、房総半島北部への拡大を防止するために、市原市北部から茂原市北西部を経て一宮町北部にかけての「分布拡大防止ライン」を設定し、増殖防止や捕獲を行っているが、効果が十分でないようだ。私が市原市内に仕掛けたトレイルカメラにもキョンのオス・メスが写っており、確実に北上していることがわかる。報道によると、千葉県から利根川を渡り、茨城県まで北上した例もでてきたという。
 人間に迷惑がられているが、彼らが悪いわけではない。人間の都合で持ち込まれただけで、彼らにしてみれば逃げ出して得られた房総の自然の中で生きているだけなのだ。ただ、人間との軋轢が生じ、特定外来生物に指定され、申し訳ないが駆除の対象とされている。ハードルは高いが、個体数を管理するとともに共生できる環境が整備されることを期待したい。
(ナチュラリストネット/岡嘉弘)

◇ナチュラリストネット/自然を愛する仲間の集まりです。豊かな自然環境をいつまでも永く残したいと活動しています。