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人工内耳とともに疾走 スーパーランドナーに
- 2017/1/1
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一定時間内に長距離を走る自転車のロングライドイベント『ブルベ』。1年間に200、300、400、600kmの4コースを完走した人にはスーパーランドナーの称号が与えられる。称号は国内でブルベを運営する(一社)オダックスジャパンを通じて、フランスにある本部クラブが認定する。普通のサイクルイベントと異なり、コース案内や伴走のスタッフはおらず、途中のトラブルも自分で対処する。距離が長いので途中から参加者を見かけなくなることもあるという。
「真っ暗な公園などにひっそりとゴールし参加者同士で称えあう喜びが達成感を倍増させます」と日焼けした笑顔で話すのは市原市椎津に住む池内伸自さん。3年前に新聞社を定年退職。「大勢で走るのが楽しい」とツールドちばをはじめ、毎月のように北陸、東北、瀬戸内と各地の自転車イベントに参加し、2年前からブルベに挑戦してきた。初めて200㎞を走った時は「時間内にゴールしたものの、膝を痛めてしばらくは歩けませんでした」。一昨年は600km挑戦前週に骨折して達成できず。今年ようやく全コースを完走し、スーパーランドナーになった。
「ブルベは時間を競わないので中高年向き」と軽く言うが過酷だ。昨年5月、北関東3県の400kmを27時間以内に走るコースでは「睡眠時間が取れずフラフラ。道端で10分ぐらい寝ました」。昨年6月、房総半島を一周して栃木県茂木を回る40時間以内で600km走るコースでは「茂木の旅館に夜中に到着、3時間仮眠をとるだけで出発。従業員には会わず、部屋に宿泊費を置いてきました」と話す。
実は池内さん、頭部に人工内耳を装用している。自転車は20代のころから趣味で楽しんできた。だが、30代になって突発性難聴で片耳の聴力が弱くなった。当初の難聴レベルは軽度で、仕事や生活に影響はなかったが、数年ごとに聴力が落ちる進行性だった。やがて難聴は進み、仕事や家庭を優先するために、やむなく自転車から遠ざかることになった。車の接近音が聞こえず、何度も危険な目にあったからだ。
50歳で言葉がほとんど聞き取れない聴覚障害3級になり、55歳で人工内耳埋め込み手術を受けた。手術後、聞こえは日常生活に不自由しないレベルに戻り、自転車を再開。「ツーリング中に道を聞いたり、宿の予約をしたりと当たり前のことができるのが嬉しい」と明るく語る。昨年10月に開催された3日間のツールドちばでは単独参加者で結成した『チームつるちば』に加入。メンバーと一緒に食事をしたり、談笑したりと一体感を味わった。「女性も2割ぐらいいたしね」と笑う。
取材前日は人工内耳友の会の交流会のため自宅から水戸までの170㎞を走ったばかり。「そろそろ歳相応にのんびりと温泉を巡るツーリングも楽しみたい。でも、孫と一緒にサイクリングイベントに参加できれば最高」