房総往来
- 2013/8/9
- 市原版

房総往来
山里 吾郎
一宮川は房総丘陵の一角、長南町深沢の山間部を源流に、九十九里浜の太平洋・一松海岸付近に注いでいる。延長約37kmの2級河川だが、市原市・大多喜町を流れる養老川がそうであるように、流域にあたる長生郡市にとっては古くから文化や経済を育む母なる川の役割を果たしてきた▼近年は河口付近を終点とする有料道路の俗称(波乗り道路)のように、四季を通じサーファーでにぎわうが、本来は広大な砂浜と干潟に恵まれた景勝地として知られてきた。特に豊富な魚介類は地元民ばかりでなく観光客の食感を大いに刺激する「食の宝庫」でもある▼早くから猛暑に見舞われた7月、偶然にも2回続けて一宮町を訪れた。地元の鮮魚店を覗くと中央にどっかりと大型のヒラメ。さらにお目当ての貝類から、迷わず九十九里名産のハマグリとナガラミを買い込んだ▼家に着くと早速調理。付け加えておくと当方「男子大いに厨房に入るべし」を実践している。ナガラミ(学術名ダンベイキサゴ)はシンプルに塩茹で、ハマグリは定番の焼き網に載せる。「ジュー、ジュー」。汁がこぼれる音に合わせて醤油を少々。あとは熱さを気にしながら口に放り込むだけだ▼茹で上がったナガラミは楊枝などを使い奥の丸まった肝まで食す。岩場に生息するシッタカ(房州ではメイロ玉)と違い砂をかんでいることも多いので、気になるときはぬるま湯で洗いながら食べる。最後に一人前500円と格安で買った縁側付き天然ヒラメの刺身も美味だったことを付け加えておく。