地元市原を愛するピアニスト もっとクラシックを親しんで

田中 美里さん

 市原市在住の若手ピアニストである田中美里さん(28)は、9月23日に市原市市民会館ホールでコンサートを行う。現在、講師として子ども達にピアノを教えながら、精力的に演奏活動もこなしている。今回のコンサートのタイトルは、『気軽にクラシックin市原 秋の名曲コンサート』。
 田中さんは、「講師をしていて、小さい子どものいるお母さんに良いコンサートがあったら教えてくださいと言われる時があるんです。でも、君津や千葉まで出ないと質の高いコンサートはないのが実態です」と話す。しっかりとした音をピアノで奏でる彼女の意志も、まさに力強かった。
 今回のコンサートもヴ
ァイオリンとクラリネット演奏者に声を掛け、共演が可能になった。そして、小さな子どものいる母親が、少しの時間でもゆっくりとコンサートを聴けるように当日は託児コーナーを開設する準備をした。
「日頃からクラシックに触れていないと、重い、分からない、眠いと三拍子が揃って遠ざかりがち。コンサートでは、楽器の説明を入れたり、子どもでも大人でも分かる曲を取り入れたりと親しめるものにする予定です」と、田中さんは意気込む。
 今まで市内を越えて随所で開催してきたコンサ
ートでは、子犬のワルツなど『ショパンの名曲』や魔女の宅急便など『ジブリメドレー』、『映画や
ミュージカル系』など幅広く演奏してきた。さらに、子どもの頃からスポーツ観戦が趣味で、大ファンであるジェフユナイテッド千葉や千葉ロッテマリーンズの応援歌メドレーさえ、独自のアレンジを加えて弾いてしまうので、これには同じファンの人々には堪らないだろう。
 どんな曲でも耳で聴いてしまえば、ピアノで音にできるという絶対音感の持ち主である田中さん。その力はどうやって身についたのか。「小さいころから歌って踊るのが大好きでした。3歳のころ、
そんな私を見て、母がヤマハ音楽教室へ入れたんです。音に親しみ、ピアノを弾くのが楽しかったのを覚えています」といい、なんと「カリキュラムに作曲や編曲があったので小1になった時には、作曲をしていた」のだとか。
 その後、市原中央高等学校を卒業、東京音楽大学大学院を修了して腕に磨きをかけ、ちば音楽コンクールで優秀賞、全関東ピアノオーディションで銀賞を獲得。母親の真里さんは、「一番すごいのは、コンサートなど重要な場面に向けて、ぐぐっと調子をあげていくところ。どんなに調子が悪くても、本番には必ずあわせてくるんです」と評す。ずっと傍で見守ってきた真里さんは、色白で細身の美里さんを眺めながら、意外にも「本当、アスリートみたいですよ」と笑う。 コンサートで綺麗なドレスを着て、身体を軽やかに動かしながら演奏するのは一瞬のこと。講師でも演奏者としても代わりが存在しないので、どんなに体調が悪くても欠かせない存在。体力勝負なのだ。「舞台が続くと、失敗できないという緊張感から精神的なストレスはあります。ただ、本番がうまくいった時の喜びを知ると辞められませんよ」と美里さんはほほ笑む。
 これまで数百冊を超える楽譜を弾きこなし、モーツアルトのオペラ『フィガロの結婚』の分厚い冊子にはびっしりと言葉が添えられている。自らを「ネガティブなんです」と表す美里さんだが、それでもピアノを続けているのは恩師からもらった、「音楽家は花ひらくまで時間がかかる」、「どんなに苦しくても30歳までは続けなさい。そこまでは勉強よ」という言葉があるからだという。
 また、「今、講師として子ども達にピアノを通して接しているととても面白いんです。吸収力もすごいし、新たな発想もある。1人1人の受け方は違うので、責任重大だとは思います。ただ、自分なりに口調や指導方法に気を配りながら、苦手な部分ではなく、得意なところから生かしてあげたいです」と目を輝かせ、仕事への熱意を語った。
 他市では、音楽家同志のネットワークも盛んで、音楽を身近に捉えているところも多い。「少しずつだとは思います。今すぐは無理でも、20年後くらいに音楽面でいちはらアート×ミックスのような環境が得られたら嬉しいです」と続けた美里さん。普段クラシックを聴いたことがない人でも、ぜひ足を運んでみてはいかが。

問合せ 田中さん
TEL 090・9370・6404

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