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ふるさとビジター館
- 2016/8/19
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人間との共生を画策する!?ツバメ
皆さんの近所で繁殖し、盛んに飛び交っていたツバメですが、8月に入って目に付かなくなってしまいましたね?一般的に、8月下旬以降、南国東南アジア方面に移動すると言われています。では、繁殖が終わったこの時期、どこにいるのでしょうか?
昼間は、数羽単位で水田、湖、草原の上など開けた場所で、渡りに備えて、エサ取り飛翔をしています。しかしながら夜になると、河口などのアシ原に集まって、いわゆるネグラを形成します。分散しているはずのツバメが何千、何万という数で集まるのです。市原近郊では養老川河口がネグラになることが多いようです。
一般的に、ネグラと言うと駅前の街路樹に、ムクドリやスズメが集まったりすることが知られています。特に数千、数万の駅前のムクドリの集団は、鳴き声による騒音と糞害で、人間に不快感だけでなくヒッチコックの映画「鳥」のように恐怖感さえ与えます。
一方、ツバメも集団でネグラを形成するのですが、民家や住宅地からやや離れた、人間が行きにくく、気が付きにくい河口などということで、ほとんど人間に不快感や恐怖感を与えません。繁殖後は目立ず、人間に迷惑をかけない野鳥になっています。
ご存知のとおりツバメは3月下旬頃、南国から渡ってきて、日本で繁殖を行います。電線に止まり、「土食って、虫食って、渋~い」と例えられるように鳴き、忙しく飛び交い、人間の目の前で泥を主材にあっという間に巣を作り上げ、営巣します。ひと夏に2回から3回、抱卵・育雛を行うため、長い期間、人間から丸見えです。カラスなどの天敵から身を守るため人間を利用しているとわかっていても、その丸見えの繁殖行動は、ドラマチックであり、人間の心を優しくさせてくれます。
極めつけは、巣立ちです。ツバメの家族が電線に勢ぞろいして、営巣場所の周りを何回か飛び回り、なごり惜しそうに離れていく行動は、礼儀正しさすら感じます。ツバメが営巣する家には幸福が訪れると言われるのは、そうしたツバメの行動によるものなのでしょう。人間を利用するだけでなく、人間を味方に巻き込む術もDNAに組み込まれているのかもしれません。
この時期、夜は集団で安全を図りつつ、日中は一生懸命虫を食べて、東南アジアまでの数千キロを渡るための体力をつけています。飛んでいる姿やネグラに集まるツバメを見つけたら、「来年も来いよ!」と声をかけてあげましょう。
(ナチュラリストネット/岡嘉弘)