いつ、自分が、家族がなるか分からない 認知症を学び、地域で支えよう

前列中央認知症サポーターグッズ・ロバくんを持っている
(左)豊留さん(右)市の担当者・亀山さん

 今春、市原市牛久にある南部福祉保健センターなのはな館にて、『認知症サポーター養成講座』が開催された。認知症サポーターとは、2005年に厚生労働省が認知症への偏見をなくすために始めた制度。これまでに同講座は自治体や企業などで約26万回以上開催され、2016年度末の時点で約883万人のサポーターが誕生しており、市原市にも約1万人いる。
 講座では認知症の症状や本人への接し方、状況に応じた支援の方法について学ぶ。約90分の無料講座を受講し認定されると、オレンジ色のリストバンド『オレンジリング』が渡される。オレンジリングは認知症を支援する目印であり、連携のしるしでもある。認知症サポーター制度を知らない人に興味を持ってもらうのにも役立つ。サポーターとしての活動は、友人や家族に認知症についての正しい知識を伝える、認知症の人やその家族の気持ちを理解するように努める、隣人あるいは街で働く人として、できる範囲で手助けするなど様々。
 このたびの『認知症サポーター養成講座』は『らくそうクラブ なな』主催で開かれ、市内在住の60代から70代の女性23人が参加。『ふまねっと運動』インストラクター豊留富美さんによる『ふまねっと運動』を中盤にはさみ、市の保健福祉部保健福祉課地域包括ケア推進室の担当職員による認知症に関する講義が行われた。
 市原市は約4人に1人が65歳以上の高齢者で、8年後の2025年には約3人に1人が65歳以上となると推計されている。全国的に、2025年には認知症の人は約700万人前後になり、65歳以上高齢者に対する割合は、約5人に1人になると見込まれている。いまや認知症は老後の最大の不安となり、超高齢化社会を突き進む日本にとって最も重要な課題のひとつとされる。認知症は、かつては高齢者がなるもので発症してしまうと進行を止められない、治療法はないと考える人が少なくなかった。しかし、近年、診断法や治療法が研究開発されており、正しい知識を得ることが必要だという意識が高まってきている。
 物忘れには加齢によるものと、認知症が原因によるものがある。老化による物忘れであれば、ヒントがあれば思い出すことができ、本人に自覚はあり日常生活に支障をきたすこともないが、認知症の場合、脳の神経細胞の急激な破壊により起こるもので、物事全体がすっぽりと抜け落ち、ヒントを与えても思い出すことができず、進行性であり日常生活に支障をきたすようになる。ちなみに、認知症は病名ではなく、認識したり記憶したり判断したりする力が障害を受け、社会生活に支障をきたす状態のこと。原因は様々だが、最も多いのがアルツハイマー病で約半数を占める。
 そこで非常に大切なのが他の病気同様、早期診断と早期治療。「認知症はどうせ治らないから、医療機関にかかっても仕方ないという誤った考え方は改めよう」ということ。認知症のような症状が出ても、治る場合や一時的な症状の場合もあるし、進行を遅らせることが可能なこともある。しかし、長い間放置すると回復が不可能になってしまう。また、64歳以下の人が発症する若年性認知症の人の場合、高齢者の場合に比べて周囲の人や家族すらも病気を受け入れるのは難しい。平均年齢51歳で男性が多く、最も多い原因は脳血栓。働き盛りの現役途中で認知症になった人への地域での手助けが求められている。以上の事柄が教材のテキストとプロジェクターを使ったスライドを見ながら説明された。
 高齢になると足をひきずって歩いたり、転倒の危険性が高まる。高齢者にとって怖いのが転倒し、骨折し要介護に陥ること。これを予防するため歩行機能を改善しようと生まれた『ふまねっと運動』。網をまたぎこすシンプルな運動だが、ゆっくり注意深く行うことでバランス感覚が高まり、ステップを学習することで認知機能の改善に効果があることが実証されており、認知症予防の運動として全国各地で行われている。
 頭と身体を同時に使う運動なので注意力・集中力・記憶力がアップする。杖をついた人でもできるそう。『ふまねっと運動』は、50センチ四方の3列のマス目が、縦に8個、横3個ずつ並んだゴム製の網を床に敷き、この網を踏まないように歩く運動なので、「ふまねっと」というネーミング。
 和気あいあいと『ふまねっと運動』を体験したあと講義再開。主に認知症の人に、どう接したらいいか3つの基本姿勢「驚かせない」・「急がせない」・「自尊心を傷つけない」と、具体的な7つのポイント「まずは見守る」・「余裕をもって対応する」・「声をかけるときは1人で」・「後ろから声をかけない」・「相手に目線を合わせて優しい口調で」・「穏やかに、ハッキリした話し方で」・「相手の言葉に耳を傾けてゆっくり対応する」や認知症介護をしている家族の気持ちの変化についても学んだ。最後に質疑応答の時間がもたれ、「オレンジリング持っている私~♪」で始まる『オレ(ンジ)リンの唄』を歌って終了した。
 認知症は誰にでも起こりうる脳の病気。しかし、家族や地域の支えがあれば住み慣れた地域で、穏やかに暮らしていくこともできるという。認知症を正しく理解して認知症の人やその家族を見守り支える認知症サポーター。880万人に達した同サポーターを厚生労働省は目標1200万人とし全国に受講を呼びかけていくとのことだ。尚、市原市には認知症の方や、その家族を支える民間組織もある。一人で、または家族だけで悩まず、相談してみよう。

・市原市での認知症サポーター養成講座についての問い合わせや認知症支援団体、関連機関についての地域ごとの具体的な「お役立ちガイド」への問い合わせは、市原市役所保健福祉部地域包括ケア推進室へ
TEL 0436・23・7605

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