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房総往来
- 2018/4/13
- シティライフ掲載記事, 市原版

彼岸の海 山里吾郎
むしょうに海が見たくなった。それも故郷ののどかな海を。寒さが長引き、3月の前半まで時折、激しい雨に見舞われたせいだろうか。ようやく桜の便りが届き始め、三寒の後、穏やかな日差しが続くようになり、縮こまっていた気持ちが一気に広がったようだ。頃は彼岸、両親の墓参りを兼ね館山道を下った▼鋸山のトンネルを抜けるとすぐに高速の出口。先日も紹介したが道の駅・保田小に寄り供花を購入、墓前に手を合わせた▼ここから海に向かって車を走らせる。目的地は元名海岸。実は前日、テレビの旅番組で歌手の八代亜紀さんと芸人の椿鬼奴さんがここを訪れ、新鮮な魚介に舌鼓を打っていた。たまたまこれを見たことが故郷行をさらに後押しした▼通称・八幡と呼ばれる磯と、海岸に突き出た鋸山の先端まで弓状に広がるのどかな海。ここには本家もあり、かつては民宿を営んでいた。海好きだった父は愛舟(ボート)を砂浜に定置、週末には決まって漕ぎ出した。海水浴場としても一級の立地で東京都の臨海学園が建っていた。その跡地に最近ホテルがオープン、旅番組の2人はそこに宿泊していた▼懐かしい風と潮、砂の匂い。ホテルのスタッフか、砂浜を清掃する若者たち、さらに波打ち際で戯れる親子連れの姿も。陽光目映く、彼岸の海はどこまでも緩やかにゆったりと広がっていた▼春は、豊かな海の幸も運んでくる。ワカメから始まり、ヒジキ、カジメ、テングサ…。トコブシ、アワビ、サザエさらにイセエビ。海岸からそのままフェリー乗り場へ足を延ばし魚介類を買い出し、その夜の晩酌はついつい度を過ごした。